2004年7月19日(月)「しんぶん赤旗」
フランスで確立している法定週三十五時間労働制に対する攻撃が強まっています。ドイツ資本のボッシュ社ベニシュー工場では、チェコへの移転計画放棄と引き換えに賃上げなしで労働時間を一時間延長することが確定的となり、労働者の反撃が開始されています。(リヨン=浅田信幸 写真も)
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仏中部の大都市リヨンに隣接するベニシューには広大な工業団地が広がっています。ボッシュ社工場は建物が白っぽく全体に明るい印象を与えます。
「労働協約の変更を受け入れなければクビになるしかありません。ほかにしようがないと誰もが考えているのです。脅しそのものです」。工場の一角にある組合事務所で、従業員代表委員を務める労働総同盟(CGT)のルネ・フラレソ氏が語りました。
八百二十人の労働者が働く同工場では自動車部品の噴射ポンプを製造しています。経営者はコストがチェコと比べて四倍以上で企業競争に勝ち抜くためにもコスト削減が絶対に必要だと主張。工場の移転か、労働条件、賃金の切り下げかの選択を労働者に迫りました。
具体的には、(1)三十五時間の賃金で三十六時間の労働(2)賃金とボーナスを三年間凍結(3)休日を一日削減―など。コストは全体として12・1%の削減になるといいます。
計画が労働者に知らされたのは今年二月。従業員代表委員、組合代表委員らすべての労組の委員が集まった時には一致して反対の声があがりました。しかし、具体的な反対行動を主張するCGTや労働者の力(FO)に対して、多数派の民主労働連盟(CFDT)は「とにかく交渉が先」の態度をとり、統一した行動は成立しませんでした。
CFDTは六月初め、協約変更の署名に応じました。ジャルマンCFDT全国書記は「雇用を守るため、現実の経済問題にこたえたもの」と主張しています。しかし、同工場のCGT代表委員のセルジュ・トルセロ氏は、「この工場はボッシュ社がフランスに持っている十九工場・事業所の中で一番小さい方です。ここなら三十五時間制をつぶす突破口にできると考えたことは間違いない」と語ります。
同工場では全労働者に労働協約改定の賛否を問う郵送投票が行われており、経営者側は90%の支持を得て改定できるとしています。労働者の受け入れは確実だとみられています。CGTは、雇用を守るための「受動的抵抗」として回答しないことを呼びかけました。
トルセロ氏は、「たたかいはこれからです。賃上げ闘争も続けます。三十五時間法違反として裁判に訴えるかどうかは検討中です」と語りました。