2004年7月12日(月)「しんぶん赤旗」
郵便物や電子メールで身に覚えのない請求をうけたという相談が本紙に多数寄せられています。「回収員がうかがう」「強制執行する」などと脅して、ありもしない「出会い系サイト使用料金」などをだましとろうとする「架空請求」――。弁護士を詐称して堂々と“営業”するなど、手口も悪質化していますが、摘発はすすんでいません。
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「出会い系サイトの使用料を払えという手紙が弁護士から来ています。身に覚えがないんですが、どうしたら…」。埼玉県の女性から相談がありました。女性あてに「法律事務所」と書かれた封筒で届いた「通知書」は、「弁護士藤城拓巳」が、二十九万三千円を支払わないと「詐欺罪、業務妨害罪の刑事告訴手続き、違約金請求訴訟の手続きをとる」などと通知する内容。弁護士印まで押してありました。
弁護士の存在を日本弁護士連合会(日弁連)に確認すると「藤城拓巳という弁護士は日本に一人もいません」との回答。通知書の住所をたずねると、JR五反田駅(東京・品川区)近くの「三十分三百円」の駐車場でした。
しかし、「必ず連絡しろ」と書かれている番号に電話をかけると、若い男性が「藤城法律事務所です」と出ました。「通知書がきているが」ときくと、「出会い系サイト○○の使用料で株式会社○○さんからで…」などと内容を特定して説明します。「弁護士登録はしているのか」「架空請求ではないか」とただしても、「よく調べてから言ってくれ」などといって認めませんでした。
弁護士を詐称する架空請求業者が、堂々と“営業”していました。国民生活センターによると、「身に覚えのない不当な債権の請求」の相談件数は、二〇〇一年度に千五百件たらずだったのが二〇〇三年度には十三万件を超えました。「相談があまりにも多く、減少していない。国民生活センターにさえ督促状が届く始末」と同センター。本紙にも「携帯電話に請求があり、約八万円を支払ってしまった」との被害の訴えが寄せられています。
架空請求は、詐欺(未遂)や恐喝(未遂)、脅迫にもなる犯罪。弁護士詐称は弁護士法違反になります。
悪徳商法に詳しい宇都宮健児弁護士は「架空請求業者は、ヤミ金融からの移行組が多く、バックに暴力団がいる。摘発は警察がやろうと思えばできるが、動いていない。やらせることが大事だが、ヤミ金と違い、被害者が弁護士に訴えてくることも少なく、運動がまだ起きていない」と指摘します。
架空請求をうけて不快な思いをした人は「こんな悪徳業者がはびこり、社会はどうなっているのか」(京都府の七十代男性)と怒りの声を上げています。
国民生活センターや弁護士会の消費者問題対策委員会がアドバイスする架空請求への対処法は次の通り。
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請求は放置し、電話連絡もしない 脅されたり、情報を教えてしまうことになるので連絡しない。
不安に思ったら消費生活センターや弁護士会などに相談、問い合わせ 「家族が使ったのでは」など不安に思ったら同じ請求がほかにも送られていないかなどの情報を得る。弁護士(弁護士会に登録)、債権回収会社(法務大臣が許可)が本物か確認する。
仮に利用していてもすぐに高額な請求に応じる必要はない 契約に同意する意思がなかったもの、無料だと思っていたものは錯誤による契約不成立を主張して争える。
脅し文句にひるまない 実際に法的手続きに訴えたり、回収にきた例は報告されていない。執拗(しつよう)な請求を受けたり、支払ってしまった時は、警察に届け出る。迷惑メール撃退サービスなどを利用し、請求をブロックする。