2004年7月12日(月)「しんぶん赤旗」
「主権移譲」後のイラクの混乱の背景には、米軍駐留と軍事作戦の継続に加え、これに追従するばかりか後押しまでするイラク暫定政府の存在があります。
暫定政府の実権を握るアラウィ首相は、かねてから米中央情報局(CIA)との関係が指摘されてきました。同首相はこれまで米軍によるファルージャ爆撃を歓迎する態度を表明。五日の爆撃では、事前に武装勢力の「隠れ家」に関する情報を多国籍軍側に知らせました。イラク人から見れば、民家爆撃の「共犯者」の役割を果たしたことになります。
また暫定政府は七日、「国家安全法」を発効させました。これにより、首相が非常事態を宣言し、夜間外出禁止令の発令や治安当局による令状なしの家宅捜索が可能になりました。同法は、非常事態宣言下で治安維持活動を行う場合、暫定政府が多国籍軍に支援を要請できることも明記。ファルージャ爆撃と同様の共同軍事作戦を合法化する装いをこらしました。
このような暫定政府の実態は、「占領軍に相談しなければ何一つ決定できない」(エジプトのアルアハラム紙)と指摘されています。
「主権移譲」前には暫定政府支持の姿勢を明らかにしていたイスラム教シーア派指導者サドル師は、四日の声明で「最後の血の一滴まで抑圧と占領に抵抗する」と述べました。声明は、暫定政府を「占領者に従う非合法の政府」と批判、「公正な選挙を通じた完全な主権と独立を要求する」と表明しました。
「主権移譲」が生んだ新たな事態に対しては、抵抗勢力の側も勢力拡大と組織統一という新たな動きで応えようとしています。
汎アラブ紙アッシャルクアルアウサト六日付は、「占領軍のイラクからの撤退と国民を代表する政府の樹立」を目標に、イラクの十六の抵抗組織が各組織の動きを調整する統一司令部を選出したと報じました。
米軍当局は、抵抗を続けるイラク武装勢力の総数を約二万人と見積もっており、その構成も外国のテロリストやイスラム過激派ではなく、国内の部族長や宗教指導者などが組織したイラク人だと認めているとされます。
バグダッドでは七日、アラウィ首相の自宅や同首相率いるイラク国民合意(INA)の本部近くに迫撃弾が撃ちこまれる事態も発生しました。
(カイロ=小泉大介)