2004年7月9日(金)「しんぶん赤旗」
日本では納税者憲章がないために、税務当局による恣意(しい)的で人権無視の徴税が行われ、納税者の権利を保護しようという世界の流れから大きく立ち遅れています。主要国、特にG8の中で納税者憲章がないのは日本とロシアだけです。日本共産党は今回の参院選政策で、納税者憲章を制定し、納税者の権利を守るルールづくりを提起しています。各国の憲章を紹介します。
山田芳進記者
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納税者の権利擁護は近代法治国家の常識です。近代税制の出発点となったフランス人権宣言(一七八九年)は「すべての市民は、自身またはその代表者により公の租税の必要性を確認し、これを自由に承諾し、その使途を追及し、かつその額、査定、徴収および存続期間を決定する権利を有する」と、納税者の権利をうたっています。
納税者憲章を持つ国ではいずれも、納税者は保護され尊重されています。
英国の納税者憲章は冒頭で、「納税者は公平に扱われ、法に基づく適正な税額のみを支払うことを要請される」と定めています。米国でも、内国歳入庁(国税庁)は「納税者は職員から思いやりと配慮のある取り扱いを受ける権利がある」「職員は、常に納税者に権利を説明し、権利を保護する」との文書を発行、配布しています。
納税の原則は申告制で、合理的な証拠、反証がない限り真実とみなされます。九七年に制定された韓国の納税者憲章では、「具体的な租税脱漏の疑いなどがない限り誠実な納税者であり、納税者が提出した税務資料は真実なものと推定される」と述べています。まず疑ってかかる日本とは大違いです。日本では青色申告の承認取り消しが当局の判断にゆだねられ、この原則がゆがめられています。
実務でも、国民の権利を侵害しないよう、厳重な枠が設けられています。税務調査のさい、当局には事前通知の義務が課され、プライバシーの擁護、補佐人の立会権などが明記されています。
フランスの納税者憲章は、税務署が申告に疑問を持ち、調査をする必要があると判断した場合、遅くとも八日前に調査の可能性を知らせ、内容を明示し、立会人の権利を伝える必要があるとしています。
不服のさいの救済措置も定められています。
英国では納税者が納得できない場合、「独立した監督官に不服申し立てができ、監督官の法解釈に納得できなければ裁判所に訴えることができる」ことになっています。米国でも「不服申立所に見直しを求める権利があり、裁判所に訴えることもできる」、オーストラリアでは「連邦オンブズマンに不服を申し立てる権利がある」など、税務署外で独立した審査を受ける権利があります。