2004年7月7日(水)「しんぶん赤旗」
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「改革の芽が出た。この成果を大きな木に育てていく」と小泉首相がいっているので、期待してもいいかな?
だれの「芽が出たのか」、だれを「育てよう」としているのかが問題です。
小泉首相が自慢しているのが失業率の低下。しかし、雇用で実際に増えたのは、パート、アルバイト、派遣社員など、非正規の不安定労働です。いまでは、雇用者の三人に一人が非正規社員になっています。
一方、大企業のもうけは増えています。二〇〇四年一―三月期の企業経営のもうけを示す営業利益は、前年同月比25%増えました。ところが、労働者の賃金は抑制されたまま。人件費はわずか2%増にすぎません。(財務省の「法人企業統計」)
日銀の田谷禎三審議委員は「少しぐらい雇用者数は増えても、雇用者所得がなかなか伸びていかない。背景にあるのは、やはり企業の根強い労働コスト(費用)抑制姿勢だろう」(七月一日の記者会見)とのべています。二〇〇〇年代になって、「雇用なき回復」状態になったことを「通商白書」(〇四年版)も指摘しています。
自民党政府による大企業・大銀行応援政治は、大企業の大もうけを後押ししています。大銀行には巨額の公的資金を投入。大企業がリストラをすればするほど減税の恩典がある「産業再生」法は小泉自・公内閣で、その対象を拡大しました。一九九九年から〇四年三月末までの間に大企業は、九万人を超す人員削減計画にたいし八百七十億円の減税を受けています。
民主党も不良債権処理のためには、大規模な公的資金の投入を主張し、「産業再生」法の改悪にも賛成しました。
小泉首相は、「大きな木に育てる」といいます。これも一部大企業だけです。
巨大公共事業を、大手ゼネコンのために「都市再生」型に集中しています。研究開発費も、〇三年度は日立製作所一社だけで八十七億円も投入。三菱重工業、東芝など上位十社の合計では四百十四億円もつぎ込む一方で、事業所数が五百万の中小企業にはわずか七十三億円にすぎません。
財界団体の日本経団連は、企業献金の「あっせん」をテコに政治への注文を強めています。社会保険料の企業負担の軽減や法人税の引き下げを要求する一方で、大企業に負担のかからない消費税の大増税を求めています。
この要求にこたえる小泉首相は、「(消費税増税の)時期や幅の議論は早く始めた方がいい」といい始めました。実際に自民党と公明党の与党税制改正大綱では、「〇七年度を目途に消費税を含む抜本的税制改革」をうたっています。
一方の民主党は、年金財源のために消費税率の3%上乗せを主張し、増税をあおっています。
先の国会で小泉自・公内閣は、国民に連続的に負担増を強制する年金改悪を強行しました。国民への負担増は、「依然として厳しい雇用・所得環境が続くなか、勤労者世帯の可処分所得を下押しし、さらなる消費の低迷を引き起こす要因になりかねない」と、民間の研究所(ニッセイ基礎研究所)も懸念しているところです。
小泉首相の経済処方箋(せん)は、“大企業を育てるために「栄養分」を国民から一方的に吸い上げる”ということにほかなりません。