2004年7月6日(火)「しんぶん赤旗」
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この春、大企業の四社に一社が過去最高のもうけをあげる一方で、働く人たちはいま、かつてない雇用不安と賃下げ不安にさらされています。原因をつくったのは誰か。財界・大企業の注文に応えて、リストラ・人減らしを制度的に促進してきた政治に責任があります。畠山かほる記者
リストラを促進した制度の一つは、リストラ・人減らしの“蛇口”を開いた制度――「産業再生」法と会社分割法です。
「産業再生」法は、リストラをすればするほど大企業の税金をまけてやる制度。施行後の四年半で、大企業は九万人の正社員を削減して、本来払うべき税金を八百七十億円も払わずに済みました。労働者一人あたりの削減につき、九十二万円もお金が戻った勘定です。
同法は一九九九年、自民・公明・自由(当時)の三党の賛成で成立。二〇〇三年三月に期限切れのはずでしたが、自民・公明・民主各党の賛成で、期間を五年間延長し認定対象を拡大した改悪法に引き継がれています。
会社分割法は、企業の不採算部門を切り離し、売却して、“職場丸ごと”リストラできるようにした制度です。労働者本人の同意を不要としたため、大企業A社の社員が、強制的にB企業の子会社社員にされた後、労働条件を切り下げられたり、退職に追い込まれる例が相次いでいます。
この三年間で、同法を活用した企業は千八百四十八社、件数は二千二百八十四件にも上り、今後いっそう増える見込みです。IBMや日立、NECなど電機メーカーや商社、鉄鋼をはじめ、広範な大企業が活用しています。同法は二〇〇〇年五月、自民・公明・保守(当時)の与党三党と民主・自由(当時)両党の賛成で成立しました。
もう一つは、“リストラ受け皿”制度で、人減らしした労働者を正社員ではなく不安定雇用で雇うための労働基準法と労働者派遣法の改悪です。
二〇〇〇年施行の改悪労働基準法は、低賃金で不安定な有期雇用を拡大するため、契約期間の上限(一年以内)を三年に延長しました。企業のプロジェクトは三―五年単位が多いため、これまで正社員が担っていた業務を、同法によって、非正社員への置き換えをしやすくしたのです。
同時に、長時間働かせても残業代を支払わずにすむ裁量労働制を、広範な“ホワイトカラー”(事務・技術系労働者)に拡大し、企業のコスト削減に“貢献”。以降、ホワイトカラー労働者の精神疾患が広がり過労死が増大しています。
同法は、日本共産党を除くすべての政党――自民、民主、平和・改革(公明)、社民など各党の賛成で成立しました。
同じく、日本共産党以外のすべての政党の賛成で成立したのが、二〇〇〇年施行の改悪労働者派遣法です。対象業務を専門的な限定二十六業務から原則自由化(製造業務など除く)しました。派遣労働は他の有期雇用と違って、企業が雇用責任を負わずに済むため、簡単に契約を打ち切ったり人を差し替えたり、企業にだけ都合のいい働かせ方です。
同法によって、派遣労働者は三年間で倍増し、現在二百十三万人に達しています。〇四年三月からは製造業務も解禁にしたため、今後いっそう増大することは必至です。
日本共産党は、これら“リストラ促進・受け皿法”にいっかんして反対し、廃止を求めた唯一の政党です。同時に、労働者保護と安定雇用の確保・拡大のための法案を提出してきました。「企業組織再編にともなう労働者保護法案」は、日本共産党以外の各党の反対で否決され、「解雇規制法案」「サービス残業根絶特別措置法案」については、各党が審議の対象にもさせませんでした。
雇用問題でも、問われているのは“財界・大企業のための政治”か、“労働者・国民のための政治”かにあります。