2004年7月3日(土)「しんぶん赤旗」
日本共産党の志位和夫委員長は一日夜のテレビ朝日系番組「報道ステーション」の党首リレーインタビューに生出演しました。趣味の音楽の話から、参院選の焦点になっている憲法・日米安保、消費税の問題などについて、キャスターの古舘伊知郎氏の質問に答えました。その大要を紹介します。
番組では冒頭、志位氏が遊説先への移動中にクラシック音楽を聴く姿や、小泉純一郎首相を国会の党首討論で追及する映像が紹介されました。クラシック音楽を聴いている志位氏が「われわれの仕事は、左の脳を使った仕事が多いでしょ。言語の世界とか。音楽は右の脳ですから、脳の疲労回復につながります」と語る場面も紹介され、古舘氏と音楽談議に。 |
古舘 共産主義の理想郷と、音楽の美しさって何か美学で結ばれるような気が一瞬したんですけど。
志位 やっぱり音楽っていいですよ。言語の世界と違った形で、人間の心に直接訴えかけてくるものがありますよね。つまり、いきなり心にドーンと入ってくる。言語の世界と違うんですよね、訴えかけ方が。
古舘 理屈と感情と置き換えてもいいと思いますけどもね。
志位 本当にすばらしい世界ですね。
古舘 それじゃあ、うまく音楽の趣味と、左脳の方の理屈を使って小泉さんを追及する、舌ぽう鋭く――いままで小泉さんを、さっき(VTRで)一部出ていましたけども、ずいぶん追い込んでる部分がある――これ、かみあってるんですね、ご自分のなかでは。
志位 いや、別に左(脳)と右(脳)を何とかっていうわけじゃないんですけど。普通にやってるんですけど。
このあと、参院選挙での目標などの話に移りました。 |
古舘 それはそうと、共産党、理想は今回、比例と選挙区で何議席。
志位 比例で五議席、選挙区が七議席ですね。
古舘 十二議席ですね。だけど、最低限の話をするのも申し訳ないんですけども、最低限、やっぱり五議席は確保しないと、参議院だけでも十議席もってないと、党首討論にも加われないということになるじゃないですか。
志位 選挙は最後までがんばらないとだめですから。ですからそれは、五プラス七ですね。本当にがんばってやりとげたいと思います。ずいぶん、空気変わってきました。あったかい空気になってきて…。
古舘 どんなところで感じますか、たとえば。
志位 やっぱり、今度、(参院選で)問われている問題は、どれも国の進路を分けるような大問題でしょ。年金でも、消費税でも、イラク・憲法、みんな大事でしょ。ですから真剣に聞いてくれますね。それから今度は共産党に入れてみようかなっていう、そういう方々の期待も感じ始めました。
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古舘 そうですか。それでいいますと、今日たまたま、自衛隊の創設五十年にあたるということが新聞にものっておりましたけれども、たとえば、ある調査によると日米安保はしょうがないという人が70%を超えていて、一方で、憲法九条――平和憲法絶対守るというのは共産党ももちろんだと思いますけども――憲法九条堅持だという人も60%。これ一見してねじれている、矛盾しているように感じるんだけれども、つきつめていえば、戦争はもちろん絶対にいやだけれども、アメリカに守ってもらうしかないかなって、さめて考えている人、多いと思う。どうですかそのあたり、志位さん。
志位 いまいわれた世論調査、私も見ました。それで、憲法九条守れっていう方が六割いるんですね。心強い話なんですね。ただ、この憲法九条を変えろっていっているのがアメリカなんですよ。いまアーミテージさん(米国務副長官)なんか、しきりに「憲法九条は日米同盟の邪魔者だ」とまでいいましたでしょ。
古舘 集団的自衛権(の行使)、とにかく入れろと。
志位 入れろと。私は、これはかなり国の進路が大きく問われている。ですから二十一世紀の日本の進路にすべきは、憲法九条を日本の指針にすべきか、日米安保でいくべきか、かなり選択が問われていると思います。
古舘 共産党も、この防衛費の方に予算をかけるのをどんどん削減して、福祉の方に、社会保障の方にと、一貫していわれていると思います。なるほどなと思うときいっぱいあります。しかしながら、防衛費をなくしていって、共産党のいうような流れになったとき、どっかの外国が攻めてきたときに、どうやって国を守るんだということを考えると、日米同盟・安保の方に戻っていくという人は多いと思います。そのあたり現実的にどうなんですか。
志位 これは、東アジアをずっとみますと、東南アジアにASEAN(アセアン・東南アジア諸国連合)というかたまりがありますでしょ。ASEANはもう、話し合いで何でも解決すると。戦争はやらないという平和友好条約をしっかり結んでますよね。それで、北東アジアをみますと、朝鮮半島の問題が残っている。しかしこの朝鮮半島の問題が、本当に解決したら、もう紛争の火だねはなくなりますね。ですからアジア全体をみましたら、東アジアは、朝鮮半島の問題を前向きにきちんと解決したら、平和の地域になりますよ。私は、そういうなかで、やはり本当に、この地域の平和と安定のために、安保を結んでいることはいいことなのかという、この問題が出てくると思いますね。
古舘 北朝鮮の話、出ましたが。
加藤千洋・朝日新聞編集委員 志位さん、小泉さんの政策には反対しているけれども、ただ一点、再訪朝を評価するという発言をされましたね。それはいまおっしゃったような…。
志位 はい、そうなんです。やっぱり東アジアを平和の地域にしたい。私たちは、拉致問題などを追及してきた党ですが、それとともに、拉致の問題も、核の問題も、どんな問題があっても、北朝鮮と日本で戦争を起こしちゃいけない。それから朝鮮半島に動乱を起こしちゃいけない。ですから、日朝の政府の間で、交渉ルートを開こうじゃないかという提案を、一九九九年に不破(哲三委員長=当時)さんが国会でやったんですよ。そういう方向でずっと動いたもんですから、私は、小泉さんがやった政治のなかで、唯一ですけど、日朝首脳会談と平壌宣言は、これは支持して、協力できることは協力しましょうといったんです。
古舘 ただ一方で、北朝鮮との国交正常化を早める。いろんな訴え方が共産党にあると思いますけど、それで拉致問題が早く解決するかなって思う人が多いと思います。そのあたり難しい国だって思っているところがあると思うんですけど。
志位 もちろん、拉致問題を全面的に解決するというのは今後の課題ですね。ただやっぱり、この問題も含めて、核を含めて、本当に話し合いで解決していくっていうルートが開かれたわけですから、これでぜひ前向きに進んでほしいと思うんです。そういうことも含めて、この地域が本当に平和な地域になっていくっていう展望を私たちは持っています。
そういうなかで、日米安保があったらどうなるかと。日米安保は、実は東アジアとは関係ないんですね。だって中東の戦争に、いまイラクの戦争に、自衛隊を送るために、「日米同盟が重要なんだ」といって送っている。「日本の安全」と関係ないところで、「日米同盟」が使われているじゃないですか。
いまアジアの国をずっと見ますと、二十いくつかの国があるなかで、アメリカと軍事同盟を結んで軍事基地をおいているというのは日本と韓国だけなんですよ。韓国は、北朝鮮との関係がありますけども、それをのぞくと日本だけなんですよ。ほかはみんな、非同盟の中立の国なんですよ。ですからそういう流れに入っていくことが、いちばん未来ある道だと私は思っています。
古舘 もう一つ聞きたいのは、経済に関係することですけれども、消費税撤廃(の話)。(消費税は)冗談じゃない。共産党の言っていることも「おお、そうか」と思う。貧富の差が非常にある日本かもしれませんが、それでも昔に比べたら、総じて圧倒的に豊かな国になった。そうなったときに貧しい国に戻る覚悟が本当にあるのなら別ですけれども、消費税もなくすとか、そういうことばっかり言ってたときに、はたしてまともな国として動いていけるのかというふうに思って、共産党から距離をおく人もいると思うんですね。そのあたりはどうなんですか。
志位 消費税については、将来的に私たちもちろんなくすということを言っています。ただいまは、増税を許さないということが一番の焦点ですね。私は、これは、税金の使い方・集め方をほんとうにただせば、そういう道が開けてくると思うんですよ。
古舘 そうですか。大企業とかもうかっているところから、かなり応分の税を取ると(共産党は)言う。そうすると、経済の動き方として、大企業がへたってきたりして、またこんどは貧乏になると思う人がいるわけですよ。
志位 私が調べてみて驚いたのは、消費税をいれた十六年前には、大企業などの法人税は(年間)二十八兆円入っていたんです。いま、十五兆円。半分になっちゃった。これはやっぱり、法人税を減税しすぎたんですね。この水準は、だいたい大企業の払っている税と社会保険料の合計で、フランスの水準の半分、ドイツ、イギリスの七、八割。ここまで下がっちゃった。ですから、これは、徐々に(元に)戻していくというのは、無理筋の話じゃない。
このあと、古舘氏は、日本共産党が暴露した官房機密費の政府内部文書や、あらかじめつくられていたイラク・サマワの陸上自衛隊先遣隊の「調査報告書」を紹介し、「共産党はすごい」「こういうのが、ぽんぽんと共産党から出てくる。各省庁にスパイみたいな人がいるんですか」と質問。志位氏は「そうじゃないんですよ。私たちを信頼して、届けてくれた、情報を提供してくれた人がいるんですね。共産党に届ければ、かならず不正をただしてくれるだろうと、それから、ニュースソース(情報源)を絶対守るという点でも安心だということで、届けてくださるんですよ」と答えました。 この番組で翌日(二日)の出演予定は小泉首相です。古舘氏は、首相評について聞きました。 |
志位 小泉さんと議論していて、残念に思うのは、私は、国民のみなさんの気持ちをなんとか首相にもわかってほしいと思って質問してるんですよね。たとえば、医療費が上がりますでしょ。そうすると、在宅で酸素の吸入やっていらっしゃる方、なかなか大変になるんですよ。ボンベをはずさなきゃならないという事態になる。そういうことをかなり国会でやったことがありました。ただ、なかなか伝わんないですね。なんていうか、ほんとうに困っている庶民の気持ちがなかなか伝わらないなという感じがあるんですよね。
古舘 そうですか。あした(二日)、小泉さんが登場するんですよ。きょうは志位さんがおみえになった。なにか一言、小泉さんに託すこと。あしたに向けて伝えますので。
志位 選挙戦の残る期間、正々堂々と政策論争をやりましょうと。国民のみなさんの前で、さわやかに、それから問題点のよくわかる論争をおたがいに本音でやりましょうということを託しておいてください。
古舘 私も、(志位さんと)同い年なんで、志位さんに負けないぐらい小泉さんにくらいついていきたいと思っておりますので。
志位 がんばってください。(笑い)
古舘 きょうはどうもありがとうございました。