2004年7月1日(木)「しんぶん赤旗」
厚生労働省の男女雇用機会均等政策研究会(座長・奥山明良成城大教授)がこのほど、報告書を発表しました。
同検討会は二〇〇二年十一月に発足、男女雇用機会均等法にかかわって四点(男女双方に対する差別の禁止、妊娠・出産などを理由とした不利益取り扱い、間接差別の禁止、ポジティブ・アクションの効果的推進方策)を検討してきました。
報告書は、「間接差別」の概念を明確にする必要があるとその整理をおこない、具体例を列挙。例として、募集・採用にあたって身長・体重、全国転勤を要件とした場合などをあげています。
妊娠・出産を理由とする解雇や配転が急増するなかで、不利益扱いを禁止する規定がない問題も検討されました。また、女性に対する差別を禁止している現行の均等法を、男女双方に対する差別禁止へ、これまでの法理念や体系全体に「影響を及ぼす」見直しをうちだしました。
今後、厚労省は労働政策審議会にはかり、〇六年の通常国会にむけて法案を準備する見通しです。
均等法制定から二十年目。賃金は正社員で男性の67%――女性への差別は解決されていません。国連の女性差別撤廃委員会からも繰り返し改善が求められています。
今回、検討会が四点をとりあげたのは、一九九七年の均等法「改正」時の付帯決議に盛り込まれた問題やその後の施行状況をふまえたといいます。しかしこの四点で、女性労働者の願いや国連の指摘にこたえたものになるのか、問題があります。
その内容にも検討すべき点が少なくありません。「女性であることを理由」とする差別だけでなく、結果としての差別、いわゆる「間接差別」禁止は当然です。しかし報告書は、全国転勤などを基準に女性を事実上、昇進昇格の道から排除するコース別雇用管理も、業務上の必要性などが認められれば差別にはならず、差別認定に使用者の抗弁をふくめた総合的判断が必要としました。また妊娠・出産にかかわる不利益扱い禁止について、産休をとらないものとのバランスに留意すべきといいます。これでは実効性が疑問です。
男女双方の差別禁止については、男女問わず差別をなくすのは当然ですが、日本でいま問われているのは国際的にも遅れた女性差別の是正です。諸外国でもイギリスは女性差別禁止で男性も準用する形、スウェーデンは法の目的に男女の平等促進であるが特に女性の諸条件改善を目指すと明記、などさまざまです。
「保護」撤廃が平等の前提だとして「女子保護」規定が廃止されて五年。男女を一律に同じに扱うことで差別がなくせないのは明らかです。均等法は現場の実態にみあった実効ある改正こそが求められています。