2004年6月29日(火)「しんぶん赤旗」
小泉・竹中「金融プラン」の立役者、竹中平蔵金融担当相が自民党・参院比例区候補に名を連ねています。竹中氏は「不良債権は確実に減った」と“改革の成果”を誇示。しかし、中小企業向け融資を「不良債権」扱いする“痛み”の押し付けに対し、保守層の中でも批判がくすぶっています。北條伸矢記者
昨年末、県内の預金・貸出残高の約半分を占める足利銀行が一時国有化された栃木県では、融資先企業を「不良債権」として切り捨てる選別が始まっています。圧力をかけて足利銀の決算を修正させ、「債務超過」に追い込んだのが竹中氏率いる金融庁でした。
公示直前に急きょ出馬を決めた竹中氏に対し、自民党の有力県議でさえ顔をしかめています。
「竹中氏が大臣になって景気はちっともよくなっていない。栃木の痛みも分かっていない。なぜ出馬するんだ」(平池秀光県議会議長=自民=下野新聞十九日付)
「来県して、なぜ一時国有化したのか話してもらいたい」(広瀬寿雄県議会副議長=自民=同)
足利銀破たんの影響で地域経済の冷え込みは深刻です。自民党代議士の後援会幹部を務める会社社長が口にします。「国有化は閣議で決めた。それに賛成した人間の選挙はもう絶対にやらない」
「足銀を支えたい」という善意から、県内の多くの企業・個人が足利銀の優先株(現あしぎんフィナンシャルグループ株)を購入しました。ところが、一時国有化で一夜にして株式は紙くず同然に。ある工場経営者(64)は「一千万円で購入した優先株が無になった。国有化を押し付けた国のやり方はきたない」と悔しさをにじませます。
五月末、優先株で損害を受けた一部株主らが国と監査法人に損害賠償を求める訴訟を起こしました。訴状は「被告国は、…一罰百戒的警鐘あるいは決断を急がせる一種のみせしめ(スケープゴート)として、…(破たんを)事実上強制した」と国の金融政策を真っ向から批判しています。
二〇〇二年十月策定の「金融再生プログラム」は「(〇四年度には)主要行の不良債権比率を現状の半分程度に低下させ、…構造改革を支えるより強固な金融システムの構築を目指す」とし、「資産査定の厳格化」などを打ち出しました。
その結果は―。中小企業に対する貸し渋りや貸しはがしが横行しました。小泉政権の三年間で銀行の中小企業向け融資は五十六兆円も削られ、足利銀や信金・信組の破たん、統廃合も相次ぎました。
三十兆円もの公的資金が注入された大手銀行は、中小業者を支援する社会的責任を投げ捨てる一方、利ザヤの稼げる消費者金融(サラ金)との提携などで収益力向上に腐心しています。三井住友グループが六月にサラ金大手プロミスと資本提携を決めたことに対し、竹中氏は「当然の経営戦略だ」と述べ、収益力強化のためなら何をしてもいいという立場です。
民主党は「不良債権処理が遅れている」と主張し、不良債権処理の加速をあおっています。
日本共産党は、資金を必要としている中小企業への手厚い融資を優先するなど、「中小企業と地域経済の再生を支援する、ほんらいの金融行政」(「参議院選挙にのぞむ日本共産党の政策」)への転換を求めています。参院選では、中小企業や庶民を支援する金融改革の道がどこにあるのかが問われています。