2004年6月26日(土)「しんぶん赤旗」
フリーターは“好きでなっている”とか、“勤労意識が低いから”といわれます。フリーター増加は青年に問題があるのでしょうか?
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青年の雇用対策を真剣にとるべき政府自身が、そういう認識を持っています。小泉内閣は姿勢を正すべきです。
日本共産党は繰り返し国会で青年雇用対策を取り上げてきました。しかし政府側の姿勢は、「フリーター志向の高まりなど、若者に勤労観が身についていない」(文部科学省初等中等教育局長)というもの。若者への予算を増やすよう求めると、公明党出身の坂口力厚生労働相は、「いろいろ(対策を)並べても、働くという気持ちにならなければ、なかなか就職しない」(昨年三月の参院予算委員会)という答弁。政府責任を棚上げし、問題を「若者の意識」にすり替えています。
この姿勢は今でも変わりません。日本共産党の大門みきし参院議員(参院比例代表候補)がことし三月の予算委員会で質問したのに対し、小泉首相は「人さまざまだ。勤労の重要性の認識、いかにやる気を持ってもらうか」だと答弁しました。
大門議員は「フリーター増加の主要な原因を、職業意識が低い、やる気がないというのは、開いた口がふさがらない」と政府姿勢を批判。「むしろ(青年を)安く使い捨てのようにしている企業こそ非難されるべき」、「みんな正社員になりたがっている」と述べ、政府にしっかり対策をとるよう要求しました。
この追及は反響を呼びました。「私もフリーターだ。フリーターは能力がない、フリーターが悪い、というのはうそだということを、共産党が主張している。がんばって」(東京・世田谷区の男性)など、多くの共感の声が寄せられました。
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フリーターのうち正社員になりたいと考えている人は政府統計でも72・2%と圧倒的。フリーター希望は14・9%にすぎません(内閣府「若年層の意識実態調査」二〇〇三年)。なぜフリーターは増加しているのでしょうか。それは、「経済の低迷による労働需要の減少や企業の採用行動の変化によるところが大きい」(内閣府〇三年版「国民生活白書」)のです。
長期不況による仕事減で新規採用を手控えた中小企業も多かったでしょう。同時に問題なのは、大企業を中心に小泉内閣が促進した雇用流動化という「構造改革」、リストラ・人減らしです。工場を海外に移した企業は新卒者採用を大きく減らしました。在職正社員をリストラし、パートや派遣に置き換えています。
社会保険・退職金不要、使い捨ての消耗品、嫌ならいつ辞めてもいいがそれは企業にとっても便利―といわれるフリーター。フリーターを増やしたのは政府と財界です。
フリーターという雇用形態は青年の生活を不安定にするだけでなく、社会にとっても大きなマイナスだと指摘されます。
フリーターの賃金、税金、消費額などを正社員と比較すると極端に低額です。銀行系のUFJ総研が試算(ことし三月発表)したところ、フリーターが正社員になれないことによる社会全体の経済的損失は、消費減だけでも名目GDP(国内総生産)を1・7%押し下げています。
それだけではありません。「若年の職業能力が高まらないため、経済全体の生産性が低下」「未婚化、晩婚化、少子化などを深刻化させる」(先の「国民生活白書」)懸念もあります。
日本にはサービス残業や有給休暇未消化という不名誉な実態があります。解消すれば三百万人以上の雇用拡大ができます。日本共産党は「安定した雇用と人間らしい働き方をまもる労働条件の確保、若者にやりがいのある仕事を増やすために、雇用への企業の社会的責任をきちんと果たさせる雇用政策への転換」を訴えています。参院選挙は政治転換の正念場です。
フリーター 「国民生活白書」(二〇〇三年版)は、フリーターを「十五―三十四歳の若年(ただし、学生と主婦を除く)のうち、パート・アルバイト(派遣等を含む)及び働く意志のある無職の人」と定義しています。「学生」と「主婦」を除くのは、「学業や育児などの傍ら、自ら選んでパート・アルバイト、派遣労働等に就く場合が多い『学生のアルバイト』や『主婦のパート』の議論と区別するため」と説明しています。一九九〇年に百八十三万人だったフリーターは、二〇〇一年には四百十七万人(若年労働者五人に一人)、UFJ総研の試算では二〇一〇年には四百七十六万人(同三・五人に一人)にまで増加すると予測しています。