2004年6月25日(金)「しんぶん赤旗」
近鉄、オリックスの合併問題は、たんに両チームの合併問題にとどまらず、「この機会に1リーグ制に」「チーム数は8から10が望ましい」などなど、球団関係者がさまざまな思惑を込めた発言をしています。
合併の是非についてはもちろんのこと、どのような球界をつくっていくか、真剣な論議を通して、魅力あるプロ野球の将来像を示すことは関係者の責務です。ところがいま、その最大の当事者である選手らが、論議の場から締め出されようとしています。
労働組合・日本プロ野球選手会(古田敦也会長)が18日、プロ野球で最高の議決機関とされる実行委員会にたいし、今回の問題は選手契約にも影響するとして、選手代表も加わることができる「特別委員会」の招集を申し入れました。ところが、実行委員会で議長を務める豊蔵一セ・リーグ会長が、この申し入れを拒否したのです。
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プロ野球界の決まりごとを定めた「野球協約」でも、「実行委員会の審議事項中、選手契約に関係ある事項については特別委員会の議決を経て、これを実行委員会に上程する」(第十九条)と明記されており、選手代表も構成要員となっています。
「1チームが消えてなくなろうとしている問題。選手だけでなく、裏方さんなど多くの人が影響を受ける。それなのに、野球協約でも保障されている手続きも踏まずに選手を締め出そうというのは言語道断。こんなごう慢な態度は許されません」
こう語るのはプロ野球問題に詳しい辻口信良弁護士。「多くの関係者が知恵を出し合い、意見を出し合っていいものをつくっていく。それが民主主義の手続きでしょう。しかも選手会は、セ、パの交流試合を提唱するなどプロ野球の人気回復のために先駆的役割を果たしている。当事者能力は十分あります」
機構側のこうした態度は、「組合活動に対する妨害であり、不当労働行為にも匹敵する」と指摘する法律関係者もいます。
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なぜ、機構側は拒否するのか。そこには、球団オーナーの意向が働いています。
巨人の渡辺恒雄オーナーは同じ18日、選手会労組の要請にたいし、「古田君はバカだと思うよ。球界全体の活性化を考えることに抵抗しているんだから」と口汚く批判しました。同じ日、ヤクルトの多菊善和球団社長は「合併は企業同士の問題で、選手が口を出すことではない」と、所属する古田会長の口封じを狙った発言をしています。
こうした球団幹部の発言は、まるでプロ球界が何十年も逆戻りしたのではないかと錯覚させるほどの、選手無視の態度です。この発言に象徴されるように、「合併問題では選手は口を出すな」という雰囲気が醸成されつつあることは黙視できません。
特別委員会の開催は、選手の権利を守る上では死活問題です。選手会が今後、どれだけ広範な人たちにアピールし、手を携えていけるのか。「正念場」としての頑張りを期待したい。
(長谷川貢本紙スポーツ部記者)