2004年6月24日(木)「しんぶん赤旗」
学者などで構成する厚生労働省の「仕事と生活の調和に関する検討会議」(座長・諏訪康雄法政大学教授)は二十三日、労働時間の規制を外す制度の導入を盛り込んだ最終報告書を確認しました。今後審議会を経て、来年の通常国会に法案が提出される見通しです。
報告書は、労働時間や就業場所、契約期間、仕事内容や仕事の拘束度などについて、労働者がみずから選択できるよう「働き方の多様化を図る」ことが求められているとしています。その一つに打ち出したのが「労働時間規制にとらわれない働き方」の導入です。「職務内容に照らし労働時間規制が必ずしもなじまない仕事に就く者」には、本人が希望することを前提に労働時間規制の保護から外すとしています。
一方、労働時間の短縮は、企業の時間あたり固定費を上昇させるから、「賃金額の減少をもたらす」ことがあるとし、賃金水準(時間あたり賃金)が低下しうることを認識するよう求めました。残業による割増賃金を支払う代わりに「代償休日」を与えるしくみの検討にも言及しています。
均衡処遇については、パート労働者などに「処遇の引き上げを図る考えとは区別されるべき」だとし、「正社員の処遇見直しもありえる」としています。複数の就業場所で働く場合、雇用保障は「弱めざるを得ない」との見解を示しています。
労働基準法は、憲法二五条の精神をうけて「(労働条件は)労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない」(一条一項)と規定しています。報告は、これに真っ向から挑戦し、雇用、賃金、労働時間を改悪・破壊する内容です。
その一つは、八時間労働制を破壊する「労働時間規制にとらわれない働き方」の導入です。
対象労働者には労働時間の保護規制がいっさい外されるため、長時間労働が無制限に合法化されることになります。使用者は残業代の支払い義務がなくなるばかりか、労働時間管理の責任を問われないため、労働者にいっそうの長時間労働を強いることは明らかです。過労死しても「自己責任」となりかねない重大な内容です。一応、「本人の希望」が前提ですが、成果主義賃金のもとで労働者は拒否できるのか、大いに疑問が残ります。
もう一つ、それ以外の働き方(労働時間や勤務地の限定など)をするならば、賃金の減少と雇用の不安定化は避けられないという立場をとっています。しかも、どんな働き方を選択するかは労働者の「自律的な選択」によると強調しています。自分が選んだのだから文句はいうなということか。
横行するサービス残業や違法な長時間労働は、当然企業の責任によって是正すべきものです。報告書はその責任を労働者に転嫁して、生活時間が欲しければ雇用・賃金の低下は自覚・納得しろ、それが嫌ならいま以上にただ働きをしろといっているに等しいといえます。財界・大企業の主張でもあるこれら内容を許さず、法の精神に則したルールこそ必要です。
畠山かほる記者