2004年6月21日(月)「しんぶん赤旗」
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日本共産党の志位和夫委員長は二十日放送のNHK「日曜討論 多国籍軍参加・年金改革―五党党首に問う」に出演し、各党の党首と討論しました。出席者は、自民・小泉純一郎総裁、公明・神崎武法代表、民主・岡田克也代表、社民・福島瑞穂党首。司会は山本孝解説委員。
冒頭、参院選で党としての存在感をどうアピールしていくかを問われ、志位氏は次のようにこたえました。
志位 くらしでも平和でも、二十一世紀の国の進路が大きく問われている。そのなかで、国民の立場に立った回答をどの党が出しているか。これをぜひ見極めて選んでいただきたいと思います。
くらしでは、私は、年金問題が最大の争点だと思います。国民のみなさんに負担増、給付減を強いる年金改悪法が通ったわけですけれども、通ったあとも国民のみなさんの七割、八割は反対です。ですから、このまま実施させるわけにいかない。実施の中止、そして国民的な討論で安心できる制度をつくろうじゃないかとよびかけたい。この問題にかかわって、消費税増税の動きが与野党から出ていますが、私たちはこれにきっぱり反対を貫きたい。
平和の問題では、多国籍軍への自衛隊の参加という、憲法にかかわる大問題をこのまま国民への説明なく進めていいのか。さらには憲法九条そのものを改定する動きが、与野党のなかにおこっていますが、これを進めていいのかが、大問題になっています。大いに憲法を守り生かす論陣を張っていきたいと思います。
民主 少なくとも国民合意必要
公明 問題まったくない
自衛隊のイラク多国籍軍参加が議論になり、小泉氏は「日本が自衛隊を指揮するわけですから、武力行使と一体とならない。非戦闘地域に限る、そういう限定的なものになる。それは(米英両国と)『了解』をとっている。憲法違反とは思っていない」とのべました。神崎氏も「問題はまったくない」と発言。岡田氏は「(これまでと)同じ法律でそのままやっていいということにはならない。少なくとも国会で議論をして、国民的合意が必要だと思う」とのべました。
志位氏は、「従来の多国籍軍参加に関する政府の見解を変えるものではない」との政府の見解とのかかわりをどう考えるかと問われ、次のようにのべました。
志位 私は、これは、成り立たない話だと思いますね。従来の政府の見解というのは「武力行使を伴う多国籍軍に、自衛隊が参加することは憲法上、許されない」という見解だったのです。これを変えるものではないといいながら、まったく納得のいく説明をやっていないと思います。
この問題について、この前、党首会談がありまして、小泉総理と私とずいぶん議論したんですけれども、(政府は)「参加はするが、指揮には入らない」「そのことを米英両国政府と『了解』に達している。それが『担保』だ」と(説明している)。ところが、私がその場で、「じゃあ『了解』の内容は、どういう内容なのか」と総理にうかがったら、それに対する答えはなかった。
(十八日に)国会の質疑があり、日本側は公使がアメリカの側とやったんだけれども、文書は出せないというんですよ。それから、相手側の名前は出せないと。こんなもの何の担保にもならない。
この問題は軍隊の指揮権にかかわる問題、憲法にかかわる問題です。公使のレベルの「了解」で通る話じゃない。外相・首相のレベルで協議して決めるべき問題であるのにもかかわらず、相手がだれかも分からない、そして文書も出さない、これは通用しない問題だと思いますね。
志位氏の発言もうけて、山本氏が「公使とのあいだで果たして担保になるのか」と質問。小泉氏は「アメリカ、イギリスとのあいだに強固な信頼関係があります」とのべ、神崎氏も「公使レベルですけど問題はない」とのべるだけ。「了解」について志位氏と小泉氏とのあいだで次のようなやりとりがありました。
志位 さきほどいった(「了解」の)問題は、きちんとした回答がなければ、国民は納得しないと思いますよ。公使レベルの「了解」というのも重大だと思うけれども、相手がだれだか、いわないわけですよ。米国の相手はだれだったんですかと聞いても、名前を出せないというんですよ。どういう内容の「了解」だったのか、文書で出してくれと、この前の党首会談で私が要求して、総理も文書で出しますと約束した。ところが、文書で出せないという。相手はだれだか分からない。文書は出せない、そんな「了解」など「担保」になりません。これだけの憲法上の重大な問題で、そういう態度を取っていたら、国民の理解はとうていえられない。この問題にきちんとお答えいただきたい。
山本 党首会談で、「文書で出す」と総理はお約束したんですか。
小泉 いや、それは日本がどういうことをやるかというのは文書で出しますよ。
志位 (出すと約束したのは)指揮権についてです。
小泉 やりますよ。出しますよ。それは政府間の交渉ですから。
山本 日米間でそういう「了解」があったと。
小泉 「了解」があった。
志位 「了解」の内容です。
小泉 「了解」の内容をこれから整理して出しますよ。そういうふうに指示していますよ。
志位 昨日の国会で「出さない」と言ったんですよ。それは撤回ですね。
小泉 それは、私は出ていませんから。それについて、どういう、いまいったような活動を日本はやるのかということをちゃんと文書にして…。
志位 どういう活動かでなく、「了解」の中身です。
小泉 「了解」の中身は、日本は多国籍軍のなかに参加しますが、武力行使と一体化とはならない。日本のイラク復興の枠内での活動というのを国民にわかりやすくいたします。
自衛隊のイラク多国籍軍参加を機に海外での自衛隊の活動がなし崩し的に広がるのではないかという指摘がされ、志位氏は次のように語りました。
志位 総理は、(自衛隊が)これまでもやってきたことと中身は変わらないんだというけれども、大きく変わる点がある。それがどこかといいますと、これまでの政府の説明は、自衛隊は占領軍の一員ではなくて独自に活動しているんだ、これが建前だったんですよ。今度は「多国籍軍に参加し、一員になる」と(首相が)明言されたんです。これは大きな違いなんですよ。
どこが違うかといいますと、たとえば米軍がファルージャで虐殺をやりました。国際的な非難を浴びました。ああいう問題も多国籍軍の「一員」となれば、これからも(米国の)パウエル国務長官は「七月一日以降も同じようなことをやる」といっている、そういう虐殺をやったときの共同責任がかぶってくる。
それから、「武力行使と一体化せず」といいますが、戦争をやっている軍隊の「一員」に入るわけです。その戦争をやっている軍隊に武装米兵を運ぶんですよ。それは、他の国からみたら、まさに「一員」として武力の行使を日本はやっているということになる。これは憲法じゅうりんをさらに一歩すすめるものです。
自衛隊の撤退問題について、岡田氏は「私たちは将来にわたって自衛隊がイラクに入ってはいけないといっているわけではない」「自衛隊を送ることについて必ずノーというわけではない」としながら、現状では「撤退すべきだ」と主張。小泉氏が「イラクの人々、指導者が日本に自衛隊の活動を要請してくれている」とのべたのにたいし、志位氏は次のように指摘しました。
志位 イラクの国民のみなさんの気持ちをあらわしたイラクの世論調査があるんですね。これは占領当局の依頼でやられた世論調査なんですよ。これは最近のものですけれど、87%の方が「占領軍を信頼していない」とこたえている。それから87%の方が「占領軍の駐留がなくてもイラクの治安は自分たちで維持できる」とこたえている。それから77%の方が「暫定政府がやるべきことは、駐留軍の撤退をすぐに命令することだ」(とこたえている)。帰ってほしいということなんです。
つまり、イラク国民が本当に主人公になって国づくりをやる――本当に主権を返還されたと実感するには、やはり事実上の占領軍として残っている米軍が一番の障害になっている。これは撤退して、そしてイラク人の本当の力での国づくりを応援していくということを、国連中心の本当の枠組みでやっていくというのがいま大切です。
討論は年金改革問題に移り、志位氏は先の通常国会で成立した年金改悪法について次のように主張しました。
志位 今度の政府案はやり直すべきだ、ということをまずいいたいですね。(政府・与党は)「百年安心」だということを盛んにいったわけです。その一番の理由として、保険料を上げるけれども「上限がある」、給付を下げるけれども現役世代の「50%を確保」すると。この二枚看板を持って「百年安心」だといっていた。ところが、これは両方ともウソだったんですね。保険料は際限なく上がっていく、給付の方は五割どころか四割まで下がっていく。両方ともこれは国民を欺いて年金法案を通したわけですから、実施しないと、やり直すべきだといいたい。
自公民が交わした「三党合意」に盛り込まれた年金の「一元化」が議論になり、小泉氏は「与野党の立場を超えて協議をしようと働きかけている」と語り、岡田氏は「(自民党内で)『一元化』が必要だと意思統一していただいて、その上で議論を」と主張。志位氏は「一元化」について次のようにのべました。
志位 年金にいろいろ制度があり、制度の間に格差がある。私たちは、この格差を是正して公平な制度にしていくということは必要だと思っているんですよ。
そのための一番、具体的な方策は何かといったら、私たちは「最低保障年金制度」をつくる。一人月額五万円の年金を保障して、その上に掛け金に応じた給付を保障する二階建ての部分をつくる。その財源は歳出の浪費の削減と、歳入については高額所得者や大企業に応分の負担――ヨーロッパ並みの負担を求める――両面でまかなっていこうという案を出しています。つまり、年金の全体を底上げすることによって格差をだんだん縮めて、そして公平な年金をつくっていこうというのが私たちの考えです。
いま議論されている「一元化」で、私が問題だと思うのは、全体として年金を貧しくしていく方向の「一元化」になっているんじゃないか。つまり、給付は少なく、負担は多くという方向の「一元化」じゃないかという点ですね。たとえば、国民年金と厚生年金をいまの制度の枠組みのなかで一本化したら、保険料をどうするのか。サラリーマンと同じように自営業者の方からも保険料をとったら何倍にもなりますよ。あるいは逆に、サラリーマンの方の(保険料の)企業負担を減らしちゃったら、財界は喜びますよね。給付は減りますよ。ですから、そういういまの枠組みを前提にしたら、これは無理筋な話だと思います。
年金の財源について議論になり、岡田氏が3%の年金目的消費税をつくるべきだとのべました。これをうけ、小泉氏は「私は年金だけの消費税でいいのかという議論が出てくると思う。各党が案を出す前に、(三党合意にもとづいて)いっしょに議論」すべきだと主張。神崎氏は「消費税を含めた税制の抜本改革、これをやはりやらざるを得ないだろうということで、三年後、これは自公間で合意して、抜本改革にとりくむということで協議をすすめている」とのべました。岡田氏は「(首相の)任期中にきちんとやりますといわないんですか」と重ねて消費税増税の結論を出すように求めました。
志位氏は、山本氏から「消費税増税反対といいましたが、財源はどう考えているか」と問われ、次のように答えました。
志位 税金の使い方と集め方と両面の改革をやります。
まず使い方についていいますと、かねてからいってきましたけれども、年間だいたい国と地方で四十兆円規模のお金を公共事業に使っている。これはヨーロッパの水準の数倍ですよ。これは適正な水準にムダを削る、五兆円の軍事費についてもムダを削ると。こういう歳出の削減がひとつです。
同時に税金の集め方、ここに問題がある。とくに、この十年来、法人税をどんどんどんどん下げてきた。その結果、いまの日本の大企業の税と社会保険料の負担は、経済の規模に比べてフランスの半分です。イギリス、ドイツのだいたい七割、八割です。日本は非常に大企業の負担が軽い国になっている。これはせめてヨーロッパ並みの応分の負担は、もうけている大企業に求めるのは当然じゃないかと。たとえば、フランスにトヨタが子会社を出したら、ちゃんと(フランス並みの)税金を払いながら商売をやってるわけですから、できない道理はない。