日本共産党

2004年6月20日(日)「しんぶん赤旗」

若者雇用対策 日本と大違い

職業訓練職つくります

独で毎年3万人分


 「この合意は、すべての青年に就職の機会を与えようという国民的な努力の結果だ」―ドイツのシュレーダー首相は十六日、政府とドイツ商工会議所(DIHK)など経済団体の間で合意された「職業訓練職協定」をこう評価しました。若者のために毎年三万人分の職業訓練職をつくるという約束です。ドイツで進められている若者の雇用拡大のための新政策の一環です。(ベルリン=片岡正明)


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職業訓練を受けるドイツの若者(ドイツ政府提供)

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職業訓練職創出のための協定の調印式に出席したシュレーダー独首相(右から2人目)(ドイツ政府のホームページから)

EU

失業後6カ月以内チャンスを与えよ

 欧州でも青年の失業問題は深刻です。失業率が欧州連合(EU)で8%を超えるのに対し、二十五歳未満は、その倍近い15・8%(二〇〇三年四月)に達しています。

 しかし、フリーターの急増など日本では若者使い捨てがやり放題で、政府は無策なのに対し、EUでは青年の雇用を本人任せにせず、EUや加盟国政府が、青年雇用を責任を持って進めています。

 一九九七年のルクセンブルクでのEU首脳会議で、欧州の雇用戦略が提起され、特に青年労働者については「失業後六カ月以内にチャンスを与えられなければならない」「各国は積極的な措置をとらなくてはならない」と規定しました。各国は「国の行動計画」を策定して実行。EUの執行機関である欧州委員会が毎年これを評価するしくみになっています。

ドイツ

経済団体と合意した雇用緊急プログラム

 ドイツでは九八年の連邦議会総選挙で成立した社民党と90年連合・緑の党のシュレーダー連立政権が、新たな雇用政策「青少年雇用緊急プログラム」(JUMP)を同年に決定し、翌年から実施しました。

 JUMPは毎年十億ユーロ(約千三百五十億円)をEUとドイツ政府が共同出資し、十五歳から二十五歳までの青年を対象に毎年「十万人の青年の雇用をつくりだす」計画です。

 ▽青年失業者の職業訓練職雇用への給与補助金の保証や地域プロジェクトの推進▽女性・障害者・外国人の職業訓練職を支援する計画▽青年パート労働への支援▽職業訓練をまだ受けていない青年への企業外での訓練▽義務教育学校を終了すべき年齢なのにまだ終えていない青年のために義務教育学校(ハウプトシューレ)修了証書の取得を援助する―など内容は多岐にわたります。

 JUMPに参加した青年は二〇〇三年五月までで、のべ約五十一万人。そのうち六割近くが職をみつけています。義務教育学校を終えられなかった青年、失業中あるいは職業訓練職にまだつけなかった青年への大きな援助となりました。

 JUMPが二〇〇三年末に終了した後、ドイツ政府は新たに二〇〇四年末までの青年雇用政策としてJUMP―PLUSを三億ユーロの予算で導入しました。

採用少ない企業には割当金出させる法案

 このJUMP―PLUSに加えて、十六日に政府とドイツ商工会議所が合意した協定は、さらに青年雇用を増やそうというもの。合意では二〇〇五年から二〇〇七年までの三年間、職業訓練職を希望するすべての青年に少なくとも一つの就職をあっせんすることを柱とします。

 ▽これまでなかなか職業訓練職につけなかった若者二万五千人を企業が受け入れる場合に政府が補助金を出す▽ドイツ政府の公務員の職業訓練職も20%増やす―ことを決めています。

 十一人以上の従業員が働く企業で職業訓練生をとらないか、少人数しか受け入れない企業に義務的に割当金を支出させる法案は、二〇〇五年秋まで凍結することも決めました。

 同法案は五月に連邦議会を通りました。野党が多数を占める連邦参議院で否決されたため、両院協議会にかかっていました。同法案が今回の合意を引き出す大きな圧力となっていました。

 ベルリンの大学に通うある男子大学生は「ドイツではギムナジウム(日本の高校にあたる)を卒業しないとなかなか就職できない。青年雇用政策は若者に職を与え、チャンスを広げるものです」と歓迎していました。

 ドイツの職業訓練職 企業が青年と職業訓練契約を結び、訓練生として受け入れ、訓練生は約三年の期間で技術を身につけ、正規に就職するドイツ独自の制度。不況の中、企業側の受け入れが年々減っていました。労働組合などは企業に職業訓練生の受け入れを強制する法を強く求めていますが、経営者団体はこれに反対していました。





日本共産党の政策

政府と大企業の責任で若者の雇用拡大を

 日本共産党は参議院選挙にのぞむ政策で国政の熱い焦点の一つとして、「不安定雇用の拡大に歯止めをかけ、若者にやりがいのある仕事を増やす」ことをかかげています。第一に、大企業が若者を正社員として採用するよう強く求めます。

 同時に、欧州諸国と比べて圧倒的に少ない若者雇用対策予算を大幅に増額し、(1)失業している人や就職できなかった若者に仕事や職業訓練を保障する(2)福祉や医療、防災、教育など国民の暮らしに必要な分野で若者の雇用を増やし、人手不足を解消する―ことを掲げています。


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