2004年6月18日(金)「しんぶん赤旗」
茨城県土浦市の常総学院高校で、隔離された合宿所和室、八畳の間への“勤務”を命じられた教諭がこのほど、県地方労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てました。県私立学校教職員組合連合(茨城私教連)も「県内私学で前代未聞の事態」と受けとめ、このたたかいを全面的に支援しています。
茨城県・栗田定一記者
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救済を申し立てたのは小仁所(こにしょ)厚志さん(46)。採用二十一年目のベテラン理科教諭です。今回申し立てに至る伏線は、同校を運営する学校法人・常総学院の桜井富夫理事長が昨年七月の一学期終業式で次のようにのべたことにありました。「ライバル私立高校に子弟を入れている教職員は辞表を出せ」――。該当する小仁所さんは退職強要のおそれを抱いて私教連に相談。八月十一日に組合を結成し、委員長に選ばれました。
新年度開始日の今年四月一日のこと、突然、小仁所さんは桜井理事長が事実上経営する別法人の特別養護老人ホームに出向を命じられました。小仁所さんは、「昨年夏の理事長発言にみる“職員いじめ”の火は消えていない。ものがいえる職場をつくりたい」と決意し、同月五日、学校法人としての同学院を相手取り、県地労委に不当労働行為の救済を申し立てました。
その後同学院側は、いったんは「地労委決定が出るまでは、出向命令に従わなくても新たな処分はしない」と約束しました。ところが十三日になって「自宅待機処分」を発令しました。五月二十八日には原田敏和校長が「あなたが職員室にいること自体が職務妨害になる。合宿所の和室を用意した」とのべ、(1)校舎別棟の合宿所和室(八畳)への“勤務”(2)職員室内からの私物撤去(3)生徒との一切接触禁止――などの業務命令を発令しました。さらに「業務命令に従わない場合は追加処分の覚悟を」と追い打ちをかけました。このため、小仁所さんは再び県地労委に救済を申し立てたものです。
桜井理事長は自民党県議。県議会一般質問のなかで「教育勅語というものをわれわれはしっかりとおやじを通して教えられてきた…日本の憲法には、日本の伝統もアイデンティティーも心も魂も書いてない…なにか小中学校、高校で心の座標になるようなものを朗読させる必要があるのでは」(二〇〇一年六月)と発言するなど教育勅語礼賛の姿勢をみせています。
「民主教育をすすめる県民会議」の神林昇代表委員は「どの高校に入るかは子どもたちが決める問題。理事長がとやかくいう権限はないし、時代錯誤もはなはだしい。教師を“座敷牢(ろう)”に閉じ込めるなどというのは人権侵害のきわみ。およそ教育に携わるものがやることではない」と指摘。私学関係者も「常総の教育現場はこれでよいのか。公教育を担っているという自覚が必要」と声をそろえています。
八畳の“座敷牢”は、こたつほどの小さな座卓が一つだけ。電話はありません。小仁所さんは、毎日朝八時半から一人でそこに座り、再び教壇に立てる日がくることを信じて教材研究にいそしんでいます。
【激励先】茨城私教連=電話029(231)5998、ファクス(231)6022