2004年6月17日(木)「しんぶん赤旗」
「政治に無関心でしたが強行採決には危機感を覚える」という若者。「今の政治に頭にくる。公明党に怒っている」という元創価学会員。数の暴力で年金改悪法案の廃案を求める国民の声を踏みにじった自・公連立による小泉内閣の暴挙は、政治に新しく目を向ける人々をつくっています。「参院選で審判を」と、日本共産党へ初めて投票したいと考えた人たちを訪ねました。
菅野尚夫記者
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「企業や一部宗教団体の横暴が許せないと思っています」。東京都内のアニメーター・青井スミレさん(27)からメールで「しんぶん赤旗」日刊紙の購読申し込みがありました。「購読のきっかけ」を記入する欄にこう書かれていました。
メールは、日本共産党などの質問を一方的に打ち切って、年金改悪の悪法を委員会採決した翌日の四日のことです。「なぜ今、日本共産党なのですか」。青井さんに会い、聞いてみました。
「私はほんの最近まで政治には無関心でした」と青井さん。でも、今回の強行採決には「危機感を持った」といいます。
「民主主義は十分に話し合って審議を尽くすことだと私は思う」。若者たちの未来がかかった年金問題が、あまりにも理不尽に決められていくことに身震いするほど驚きました。
「私たち(若者)の間では政治についての考えを鮮明にして積極的に対話したり、政党支持をはっきりさせて議論することはありません。意見が対立すると気まずくなる。それをさけ、あいまいないいかたで、表面上は仲良しでいたい。でも、『それでいいのか』と思わせたのが今回の強行採決でした。自分の意見を表現しないと」
青井スミレさん(27)が「アニメーターになりたい」と、大分県から上京したのは高校を卒業した十八歳のとき。「手づくりの物づくり」が魅力で、アニメの制作に携わって十年目になります。
上京しての一年間は「収入は八万円。家賃が六万円。残り二万円が食費。電気・ガス・水道代も払えず、電気もつけないで」暮らしました。
二年前から仲間とアニメスタジオをつくり、アニメ「アンパンマン」などの制作の下請けをしています。
「私は個別の発注がありますから、月二十万円の収入になりますが、二十代のアニメーターは十万円から十五万円。年金の保険料が払える収入などありません。未納です。ますます払えなくなる。払うなら納得して払いたい」と青井さん。
「これからの時代の日本を支えるのが若い人なのに、その私たちを苦しめる。国民のことを考えているのでしょうか?」
◇ ◆
理不尽な横暴がまかり通ってきた自民党・公明党政権の三年間。「政治と宗教団体の一体の関係に納得できない」と、青井さんはいいます。
数年前に青井さんにはいやな体験があったからです。当時、仕事上の付き合いがあった人から、選挙のときには執拗(しつよう)に公明党への投票を強要されました。「どうして協力しないの。罰があたる」「入信しないと罰が当たる」といわれました。
「近所のもの」といい、たくさんの人が自宅に訪ねてきました。取り囲んで公明党への支持を押し付けるやり方に疑問をおぼえました。「国会での強行採決は、あの時のことがよみがえった」と青井さん。「小泉さんは公明党の力も借りて、たしかに選挙では勝ちました。でも、国民のためになっているだろうか? と疑問に思いました」
◇ ◆
「年金」「イラク」「自衛隊」「拉致」「失業」――。インターネットで検索した青井さん。ネットの掲示板の発言で、「読んではいけない」「見てはいけない」と書かれている「しんぶん赤旗」があることを知りました。
「ヘェー。読んではいけない新聞があるんだ」と不思議に思った青井さん。「と、言われると見たくなる」好奇心でのぞいたのが「日本共産党中央委員会のホームページ」。
のぞいてみると、「他の新聞では書けないところを書いている」ことを発見しました。「ハンナン牛肉偽装」「アメリカ言いなりの小泉内閣」。青井さんにとっては「知りたいこと、利権に惑わされない正しい情報」と思えました。
こうして読み始めた「しんぶん赤旗」。「国民の立場にたった信頼できる新聞だし、『こんにちは日本共産党です』のパンフレットを読み、歴史の長い政党で、平和を守るために今も昔も命がけの党。今度の参院選挙は共産党に入れます」
「一時、創価学会に入り、『聖教新聞』をとっていた。今の政治に頭にくる。公明党に怒っている」。七日午後六時すぎに日本共産党本部に電話で「しんぶん赤旗」日曜版の購読を申し込んできた静岡市の会社員・横山美雄さん(49)=仮名=。パンフレット『こんにちは日本共産党です』を読み、パンフレットに記された党本部の電話にダイヤルしました。
横山さんを静岡市まで訪ねました。
「強行採決は許せない。公明党が与党に入って自民党と連立。この三年間は負担を増やすだけ。『福祉の党』というから望みをかけて公明党に入れてきたが、都合よく利用するだけの公明党。参院選挙で結果を出す。今度は共産党だ」
高校卒業後に大手重工業に入社。数年前にそこを辞め、四年前から実家のある静岡市の会社で働く横山さん。痛切に思っています。
「自民党政治では生活が苦しくなるばかり。今、手取り二十三万円程度です。働きつづけて結婚の機会を失い独り身。健康、老後…。不安は増すばかり。加えて健康保険も厚生年金も負担増。流れを変えないとだめだ」と。
前回の衆院選挙では民主党に入れた横山さん。「小沢さんも岡田さんも元々自民党。中に自民派がいて流れは変わらない。私の望みは生活しやすくしてほしいこと。共産党に望みをかけたい」