2004年6月15日(火)「しんぶん赤旗」
日本共産党の市田忠義書記局長が十三日のNHK「日曜討論」で行った発言(大要)を紹介します。他党からの出席者は、自民党・安倍晋三、民主党・藤井裕久、公明党・冬柴鉄三、社民党・又市征治の各幹事長。司会は山本孝NHK解説委員。
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まず、イラクでの多国籍軍への自衛隊参加問題がテーマになりました。
安倍氏は「(サマワで自衛隊が行っているこれまでの活動と)同じ活動であれば、憲法に反しない限り続けていくべきだ」とし、冬柴氏も「武力行使を伴わないという担保があればいいのではないか」などと述べ、多国籍軍への参加を容認。市田氏は次のように述べました。
市田 (自衛隊の多国籍軍参加には)四つ問題があると思います。
一つは、(参加への)賛否を超えて、国会にも国民にもはからずに、(八日の日米首脳会談で)ブッシュ大統領に小泉さん(首相)が(参加を)約束をしてくるというやり方に一つは問題がある。
もう一つは、(国連安保理決議一五四六によれば)多国籍軍は「統一的な指揮の下」に(置かれる)。これは事実上、米軍(の指揮下に置かれるということ)です。
しかも、任務は「安全と安定を維持するのに役立つあらゆる必要な措置」と(決議に書いてある)。これは、今(米占領軍が)やっている掃討作戦だとか、イラク国民の抵抗を抑える抑圧とか、あるいは(イラク中部)ファルージャでの皆殺し作戦だとかをやるわけで、武力行使を目的としていることは、明々白々だと思うんですね。
これは、(任務・目的が武力行使を伴う多国籍軍への自衛隊参加は憲法上許されないという)これまでの政府の憲法解釈からいっても、明白な憲法違反です。
三つめに、多国籍軍の性格です。あの間違った国連憲章違反のイラク戦争をやり、米軍が(イラクを)占領していたわけですけれども、「多国籍軍」と名前は変わりましたけれども、事実上、占領軍と同じで、これはイラク国民の激しい批判、抵抗がある。
最後に、「非戦闘地域に自衛隊が行く」と(いう)イラク特措法の政府の言い分も今、崩れているわけで、サマワ地域も(自衛隊の宿営地に向かって)迫撃砲を撃ち込まれているわけですから、その四つの点でわれわれは反対です。
安倍氏は、自衛隊が多国籍軍に参加しても「小泉さん(首相)の指揮命令系統の中で協力していく」と発言。市田氏は、山本氏から「多国籍軍の指揮に日本は従わなくていい、こういう取り決めができると思うか」と問われて、次のように述べました。
市田 そんなことは、実際にはあり得ない。
“これまでと同じだから何の問題もない”とおっしゃったが、イラク特措法にも「安全確保支援活動」というものが(自衛隊の)任務としてあるわけです。「人道支援」だけやっているようにおっしゃるけれども、現に武装した米兵の輸送も(自衛隊は)やっているんですよ。
これは明確に米軍と一体になった(活動だ)。私は、今まで(自衛隊が)やってきたことも憲法違反だと思うんだけれども、それを、米軍の指揮下に入ってやるということになれば、その指揮下に入りながら、こういうことだけは言うことを聞きませんよということはあり得ない話だ。
もし、単独で、武装した自衛隊がイラクで活動するとすれば、これはまさに主権侵害の侵略行為そのものということにもなるわけで、どっちから見ても、矛盾だらけで、言いつくろいにすぎないと思いますね。
安倍氏は「今までもCPA(連合国暫定当局=イラク占領当局)に調整官が出ていって、何をどうするかという調整はしている。名前が変わるというだけだ」などと繰り返しました。
また、国連安保理決議一五四六を自衛隊派兵の根拠にするために法「改正」が必要かどうかが議論になり、冬柴氏は「法律を変えることはしなくてもいい」と発言。安倍氏は、イラク特措法が自衛隊派兵の根拠とする国連決議を政令で指定すると定めていることを踏まえ、「政令で書き加えていくことによって十分可能だ」と述べました。これに対し市田氏は次のように指摘しました。
市田 それは全然違います。今のイラク特措法自身が憲法違反だと思っていますし、それに何か若干付け加えたからといって、容認されるものではない。
それから、今度の新しい国連(安保理)決議の問題ですけれども、イラクへの完全な主権の返還だとか、新政権の樹立に向かう過程での国連の主導的な役割だとか、あるいは占領軍の駐留期限を切ったという点では、国際社会の願いを反映していると思うんですよ。
ただ、それがその通り実行されるかどうかが問題で、そういうときに多国籍軍に日本の自衛隊が参加することは、この新しい決議の精神にむしろ逆行することになると(思う)。
現に(イラクでは)激しい戦闘が行われているわけだし、しかも、イラクの暫定政権には、多国籍軍がやる行動への拒否権は明記されていないんですよ。調整はするとなっていますけれども、拒否権は明記されていないという点でも問題がある。
先ほど、安倍さん、問わず語りにおっしゃったけれども、いまもCPAに調整官を出してやっているんだとおっしゃいましたよね。まさに、米軍の指揮下で今もやっているんですよ。それをもっと明確に、多国籍軍の指揮下に入るということになれば、いっそう米軍の指揮の下でやらざるを得ないわけですから、どこから見ても問題です。
討論では、年金再計算の基礎となる合計特殊出生率が二〇〇三年で一・二九まで落ち込んだことを、政府が年金改悪法成立後に発表したことなどが議論になりました。
安倍氏は「法案が審議された間を避けたわけではない」と弁明。藤井氏が、国民年金の保険料について「固定」されるとしてきた一万六千九百円を超えて上がり続けるのを参院で初めて説明したことなどと同じやり方だと批判したのにたいし、冬柴氏は「明らかにならなかったのは、衆院で(野党が)まともな質問をしないからだ」と野党に責任を転嫁しました。
市田氏は次のように述べました。
市田 私、いまの(冬柴氏の発言)は、許されない暴言だと思います。
政府は説明する責任があるんですよ。こういう審議をしていただきたいから、こうなりますよということを言って、国会で審議すべきなのに、“衆院で問わなかったからだ”と。そんな言いぐさで乗りきるというのは絶対許されない。
それから、(合計特殊出生率の)一・二九問題だって、(政府は)一・三二と言っていたわけですよ。それが急に変わったわけでしょう。
さきほど、“最大瞬間風速だ”と言った人がいるんですよ。別のテレビ番組(同日放送のフジテレビ系「報道2001」)で。
しかし、五年前も十年前も、出生率は違っていたんですよ。(政府が)言っていた数と。今回も変わっている。
しかも、これだけじゃないと思うんです。厚生年金の加入者が、百万人、この二年間で減っているのに、(年金改悪法では)十万人急に増えるという想定になっていますね。国民年金(保険料)の納付率、いま六割でしょう。これが二〇〇七年に八割になるという想定なんですよ。いっぱい、そういう計算の基礎になっている想定が、ごまかしだらけなんですよ。それを土台にして、「モデル世帯」(夫が四十年サラリーマンで妻が専業主婦)でいえば、“50%を割らない”と。それも割るということがはっきりしたし、土台自身もごまかしだったと明らかになったわけで、“問わなかったから答えなかったんだ”というのは、私は暴言だと思います。
参院厚生労働委員会での強行採決について冬柴氏は「百人も民主党議員が結集することになっていたから、混乱を避けるためやった」などと弁解しました。
市田氏は、次のように指摘しました。
市田 共産党は「バリケード戦術」だとか審議拒否はやりません。
これは、与党が提案して、与野党が理事会で合意して、この時間で質問すると決まっていたんですよ。質問が奪われたのは、共産党の小池晃(政策委員長)と社民党の代表(福島瑞穂党首)と、西川きよしさんです。
それを奪っておいて、“衆院の民主党の誰かが来ていたから、打ち切っていい”と、そんな論理は成り立たないとはっきり申し上げたい。
十六日に会期末を迎える国会最終盤への対応と今国会の評価について議論。市田氏は次のように語りました。
市田 こんどの国会振り返って、これほど国民の世論、思いと乖離(かいり)した議論に終始した国会はなかったと思います。イラク問題でもそうだったし、年金法案では六割―七割の人が通すべきではない、通った後もある世論調査では「審議が不十分」だったというのが86%にものぼっていました。われわれ論戦でも国会戦術でも国民の声を代弁して堂々とたたかってきたつもりです。
われわれは、ある法案が気に食わないから審議を拒否したり、バリケードを築いたり、そういうやり方はいっさいとりませんでした。たとえば、年金問題の最終段階でも議長、副議長に代わって事務総長が取りしきって議長不信任案、年金法案の議論がありました。これは国民の声を代弁して堂々と論陣をはったのは率直にいってわが党だけでした。論戦の問題でいえば、例の「百年安心」といわれた二つのウソを暴くという点でもがんばりました。
私、年金問題で提案があります。やっぱりあれだけ国民の不安があったんだから、実施をやめて、われわれ新しい国会で廃止法案をだす予定ですが、国民に信頼されるような国民的な討論を国会であらためてやっていく必要があると考えている、出直すべきだと。いまの法案は廃案にすべきだと。いまの国民の暮らしをめちゃくちゃにしてしまうわけですから。
提案に対し、安倍氏は「いまこれを(年金「改革」)やらなければ年金財政に欠損が出てしまう。それを放置するわけにはいかない」と強弁しました。
最後に、参院選で各党何を争点にしてたたかうのかを問われ、市田氏は次のように語りました。
市田 熱い焦点としては年金、イラク、消費税、憲法、雇用、北東アジアの平和と安全の問題があると思います。そういう六つの熱い焦点について現状の告発とともに、共産党としての対案を示しながら選挙をたたかう。六つの熱い焦点を解決するためにも、私はいまの政治が陥っている大きな病として、なんでもアメリカに付き従うと(いう政治を改め)、もっと自主性を発揮しようじゃないか、その土台には安保条約があるわけで、安保条約廃棄を。もうひとつは税金の使い方が、大企業・財界優先で公共事業に四十兆円、社会保障に二十五兆円という逆立ちした税金の使い方を改めると。そういう改革の方向も示していきたい。