日本共産党

2004年6月11日(金)「しんぶん赤旗」

暴力の定義拡充

防止・救済へ新たな検討

DV防止法の改正と課題 <下>


加害者更生重視し

 第三に、加害者更生対策の課題を本格的に重視することです。

 今回の改正で、保護命令の対象が元配偶者にも拡大され、家からの退去命令期間が従来の二週間から二カ月に延長されました。しかし、保護命令はあくまでも緊急の場合の措置であり、期間がすぎれば、命令は解かれます。

 その間に、被害者の自立、生活再建の方向のめどがたたず、加害者が反省できないままであれば、同じことが繰り返される可能性もあります。「子どものこと、また自分の夫に対する愛情を考えると現時点では離婚を望んでいない」「暴力をふるう男性に、強制的に診察、カウンセリングをしてほしい」という被害者の声もあります。

 暴力の防止・被害者救済のうえでは、遅れた分野である加害者問題の位置づけを明確にし、対策・更生について、行政の責任ある対応がつよく求められています。

精神的暴力含む

 第四に、今回の改正で暴力の定義が、「心身に有害な影響を及ぼす言動」として精神的暴力にまで拡大されましたが、保護命令の要件として精神的暴力のどこまでふくめるかは、今後の検討課題として重要になっています。

 DVは殴る・けるなどの身体的暴力とともに、暴言や罵倒(ばとう)、脅かすなどの精神的暴力も多く、両方が複合している場合が大半をしめています。DVの定義に精神的暴力もふくめることは、こうしたDVの実態を反映したものです。

 加害者の行動を一定期間規制する保護命令の要件として、目には見えず、被害者自身の訴えが唯一の根拠となる精神的暴力のすべてを保護命令の要件とすることは慎重であるべきですが、少なくとも刑法上の「脅迫」にあたる言動については、要件にすることが必要です。

 実際、「精神的暴力の方が、恐怖は大きく重大」という被害者の声(東京都調査)は切実であり、「脅迫」で精神的にPTSD(心的外傷後ストレス症候群)などの精神的障害になるケースもあります。期限付きであれ、被害者と加害者の分離状態をつくることは、さらなる被害を防ぐことからも重要です。

憲法の立場で

 日本共産党は、DV防止法の制定に先立つ二〇〇〇年九月、夫婦間暴力の防止・被害者保護・自立支援に関する法律案大綱を発表し、昨年十月には、改正への提案をおこない、実効あるDV防止法をめざして奮闘してきました。

 男女が平等でともに力を合わせ社会や家庭をささえ、人間の尊厳を大切にする―憲法の立場にたち、家庭や職場、地域あらゆる場で人間が大切にされる社会をつくる努力とあわせ、家庭での配偶者暴力や児童虐待、高齢者虐待などをなくすために国民とともにとりくみをすすめていくものです。

 (日本共産党女性委員会)

 (おわり)


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