2004年6月11日(金)「しんぶん赤旗」
少子化傾向に歯止めがかかりません。女性が生涯に産む子どもの数(合計特殊出生率)は、二〇〇二年には一・三二でしたが、〇三年には一・二九へいっそう低下していることがわかりました。
見過ごせないのは小泉内閣と自民党、公明党が成立を強行した年金改悪法案と出生率とのかかわりです。政府・与党の年金見通しは、二〇五〇年の時点で、出生率を一・三九にするというもので、〇三年は一・三二と推定していました。こうした前提にたって、厚生年金保険料を現行の年収の13・58%(労使折半)から二〇一七年には18・3%に引き上げ、給付水準は、現役世代の賃金の59・3%(モデル世帯)から二〇二三年度には50・2%まで引き下げる試算をおこない、改悪法案を審議しました。
政府・与党の立場は、少子化の急激な進行を避けることができないという前提にたって、年金制度を将来にわたって「負担増と給付減」をつづける展望のないものです。
それを取り繕うために出してきたのが「給付は下げるが、現役世代の手取り収入の50%は確保する」という看板でした。
年金改悪法案の参院段階の審議で「50%確保」は年金を受け取り始める六十五歳の時点のことで、あとは下がり続け、40%まで落ち込むことが明らかになりました。
「50%確保」の看板が偽りだったとわかり、しかも、衆院通過を強行したあとで資料を出すという、政府・与党のごまかしの態度に、国民の批判が高まりました。
それでも、自民党や公明党は、「『50%以上』(モデル世帯 受給開始時)」と注をつけて、はげた看板を使っています。
ところが、年金改悪法が成立したとたん、今度は受給開始時の「50%確保」の前提としてきた政府出生率見通し(一・三二)をも下回る一・二九となることが明らかになりました。「受給開始時の50%確保」すら偽りだった可能性があります。
年金財政の基本である加入者の数も厚生年金で増加に転じる見通しについて根拠を示せないままです。
実施前から破たんが明らかではありませんか。年金改悪法は、参院選で審判を下しやり直させましょう。
もともと、政府・与党のように、少子化の進行を避けることができないという前提にたっていては、年金制度もゆきづまります。
少子化の克服を、年金問題を解決する土台として、本腰を入れるべきです。
出生率の低下は、他の先進諸国でも共通した問題ですが、国が率先して社会全体で子育てを支える体制を整備して、持ち直しているのが特徴です。女性の就業率が高い国、男女の賃金格差が小さい国ほど、出生率が高い傾向にあります。
日本でも正社員の女性は非正社員よりも結婚率が高く、子どものいる割合も高いという調査があります。若い世代に高い失業率と不安定な仕事が広がり、家庭を犠牲にする長時間労働が横行している、いまの社会では、子どもを安心して生み育てる環境が土台から揺らいでいます。
日本共産党は、参院選政策のなかで「国民のくらしを支え、人間らしい生活をとりもどす政治、経済、社会への転換こそ、少子化社会を克服する道です」と訴えています。支持を広げ、安心して子どもを生み育てられる社会にしていきましょう。