2004年6月10日(木)「しんぶん赤旗」
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配偶者間暴力防止法(DV防止法)成立から三年あまり。五月二十七日に成立した改正DV防止法は、被害者や支援団体、自治体関係者などからだされていた要望が反映され、配偶者暴力の防止、被害者救済、自立支援などの解決にとって新たな内容がもりこまれました。
配偶者間暴力防止法の制定によって、配偶者間であっても暴力は犯罪であるという社会的認識がひろがり、全国の配偶者暴力相談支援センターに寄せられた相談は、七万五千件を超え(二〇〇二年四月―〇四年二月)、被害者の申し立てにより裁判所が発する保護命令は三千八百二十四件(〇一年十月―〇四年三月)にのぼっています。
こうしたなかで、第一に、国と自治体の責任で被害者の自立支援を実効あるものにすることの緊急性と重要性が浮き彫りになっています。
東京都がおこなった被害者本人と面接しての調査では、被害者の多くは小さい子どものいる三十―四十代の女性で、多くは結婚後一年までに夫からの暴力が始まっています。
長期間の暴力に対して、六割を超える人は「相手に見切りをつけ、離れて自活の道を歩みたい」と希望しつつ、八割の人は加害者と「同居」し、暴力から逃れられないでいます。その理由として、もっとも多いのが「経済的な不安」(四割強)です。
改正法は国と自治体は、「自立を支援する」責務を有すると明記。配偶者暴力の防止と被害者保護の施策に関して、国は基本方針を、都道府県は基本計画を策定することを義務づけました。
方針・計画の策定・実行にあたっては、すでに自治体独自の努力でおこなわれてきている相談体制の拡充、緊急一時保護施設の開設、経済的自立促進のための生活資金の貸し付けや公営住宅の優先入居、民間シェルター(避難施設)への財政援助などのとりくみをさらにひろげ、被害者への経済的・精神的支援、就労など生活再建に役立つものにすることが求められます。
第二に、加害者の子どもを保護し、「児童虐待」から守るための施策が必要です。
加害者の四割は子どもの前で暴力をふるっており(法務省法務総合研究所・DVの加害者に関する研究・〇三年十二月)、親同士の暴力を目撃している子どもは、強い恐怖感、暴力を止められない無力感など精神的ダメージを受けています(表参照)。
先に成立した改正児童虐待防止法も、こうした問題を重視し、子どものいる家庭での「配偶者に対する暴力」も「児童に著しい心理的外傷を与える言動」として、「児童虐待」にあたるという新たな定義が加えられています。子どもへの「ケアシステム」、子どもの成長に不適切であると考えられる場合、加害者の「監護権や面接交渉権の制限」などの検討も課題になっています。(日本共産党女性委員会)(つづく)
DV防止法は一九九〇年代に入って国際的に女性への暴力撤廃の流れがひろがり、日本でも夫やパートナーからの暴力が社会的にも問題になるなかで、二〇〇一年四月、超党派の議員立法によって「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(DV=ドメスティック・バイオレンス=防止法)が成立。配偶者からの暴力は「犯罪」であること、国と自治体の責務として暴力の防止・被害者保護、都道府県に配偶者暴力相談支援センターの設置、裁判所が加害者に命ずる保護命令(接近禁止命令、住居からの退去命令)などを規定。今年五月、一部改正がおこなわれました。