2004年6月9日(水)「しんぶん赤旗」
日本共産党国会議員団が発表(五月十四日)した大型店・商店街・まちづくりに関する政策提言―「大型店の身勝手をゆるさず、地域の商店街・中小商店の値打ちがいきる『まちづくり』ルールの確立を」について、塩川鉄也衆院議員(日本共産党国会議員団経済産業部会長)に聞きました。
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―なぜ今、政策提言を出したのですか。
塩川 今、全国で商店街や大型店のあり方について改めて見直すことが必要じゃないか、という声が広がっています。その声にこたえるためです。
大規模小売店舗法(大店法)の廃止と大店立地法の施行(二〇〇〇年六月)から四年がたちました。大型店の出店は“ノン・ルール(ルールなし)”といわれ、自由勝手に出店・退店する大型店の身勝手さは地域の人々に「大型店には車輪がついている」などとまでいわれています。
各地で大型店の出店ラッシュがおこり、地域商店街がその影響で衰退し、中心街では大型店が撤退して、空洞化も起こっています。
都市中心部では食料品を買える店がなくなり、老人がリュックサックを背負ってバスで買いものにいくという不便さえ生じています。
提言は、私たち日本共産党の国会議員団が全国各地の商店街で調査した実態をもとに、大型店の出・退店にルールを設け、商店街や中小商店の値打ちが発揮される「まちづくり」のとりくみが進むよう、国民的な論議を呼びかけるものです。
―提言の特徴を教えてください。
塩川 提言は二つの大きな柱からなっています。その一つは、欧米に比べ、あまりに無秩序な大型店の出店にルールをつくることです。
欧米諸国では、一九七〇年代から八〇年代の規制緩和の反省に立ち、大型店規制・商店街振興の強化に政策を転換しています。
私たちは、「まちづくり条例」の制定など、大型店の立地や商業集積のあり方などについて、地方自治体がみずから決定する権利を全面的に尊重することを要求します。
福島県では県の諮問機関「広域まちづくり検討会」が、大型店の立地ビジョン(構想)や個別の出店を調整するしくみづくりを提案し、これらを盛り込む県の条例も視野に入れています。
政策提言は、大型店にたいし、地域の商業環境や“街づくり計画”、住民の生活環境に与える「影響評価」とともに、住民、地方自治体との協議、合意を義務付けます。「大店・まちづくりアセス」です。
中心市街地や商店街活性化計画に支障をきたす出店は原則禁止します。市町村と都道府県が出店地を誘導するようなしくみをつくることを提案します。撤退についても、予告と関係地方自治体との事前協議を義務付けます。
政府は大店立地法一三条に「地域的な需給状況を勘案することなく」という文言を盛り込み、大型店出店による商店街や中小商店への影響を配慮することを禁じました。地方自治体の動きをしばっています。当該部分の削除など、同法の抜本的改正を求めます。
大型店の深夜営業についても、騒音や青少年への影響から各地で問題になっており、規制が必要です。条例も含め対応するべきです。
また、家電製品やビール販売などでみられる量販店と中小商店のあいだの卸値の異常な格差など、大型店と商店街の公正な競争を成り立たなくさせている不公正取引の是正が必要です。
―商店街の再生・活性化についてはどうでしょう。
塩川 それが提言のもう一つの柱です。停滞・衰退している商店街の、「地域コミュニティーの核」としての本来の値打ちを生かすまちづくりを進める政策です。
提言では、商店街の機能・役割を四つの角度からまとめました。商店街は、(1)歩いて買い物ができる身近な利便性の提供の場であり(2)地域の文化・伝統や青少年教育、防犯・防災に貢献する「地域コミュニティーの核」(3)商品知識や豆腐屋など多彩なものづくり職人の集積地(4)地域の経済循環の要―というものです。
まちと地域に欠かせない商店街が重大な危機にある今こそ、国や自治体は商店街の再生にむけ総合的、抜本的な支援の強化をするべきです。
低家賃で空き店舗を貸し若者の創業を支援する「ミニ・チャレンジショップ」事業(富山県)やお年寄りの技能を生かした弁当の給食サービス(京都)、リターナブル(再使用可能な)ビン・ビールの消費運動(神奈川県茅ケ崎市)など、各地で商業者と地域住民が共同したさまざまなとりくみが進んでいます。
提言が「まちづくり」の活動と論議がさらに進むきっかけになることを期待しています。
I 大型店の身勝手を許さず、住民と自治体がみずから「まちづくり」できるルールの確立を
(1)地域環境への影響評価の義務付けなど、出・退店規制のルール化(2)異常な深夜営業を制限し安全・安心な「まち」と商業文化をまもる(3)中小テナントの権利を守り大型店運営者と対等平等な関係を(4)大型店と取引業者との取引適正化(5)地方自治体が条例をつくる権利を全面的に尊重。大店立地法を抜本改正
II 商店街は「地域コミュニティーの核」「地域の共有財産」、その値打ちが発揮され住民が安心して暮らせる「まち」を
(1)地域の主人公である住民、市民、事業者、NPO、行政が一体となった「商店街の振興・再生」計画を「まちづくり」の柱に(2)「空き店舗」対策の抜本的拡充でにぎわいのある商店街と「まち」を(3)八百屋、魚屋、肉屋など生鮮食品店のそろう商店街を。「小売市場」の配置も支援(4)住民参加を軸とした「まちづくり」を支援する国・地方の予算の拡充(5)「ライフ・エリア(生活圏)」構想など歩いて買い物ができる「まち」づくりについて国民的議論を