2004年6月5日(土)「しんぶん赤旗」
問い=「雇用のミスマッチ」とよく言われます。就職口はあるけれど、職を探している人がぜいたくを言って就かない、あるいはそれだけの能力がないかのように聞こえます。求職者に原因があるのでしょうか。
|
|
答え=「雇用のミスマッチ」とは、直訳すれば求人と求職の不適合ということですが、確かに政府や一部マスコミは求職者に問題があるかのように描きます。
小泉首相は国会の所信表明演説や答弁で「公共職業安定所には、求職者を上回る求人がある」「求人と求職のミスマッチを解消しなければならない」と繰り返します。これは現実をよくみない議論で、これでは今の雇用問題は解決しません。
公共職業安定所(ハローワーク)の統計をみると、求職者より求人の方が多いのはパート労働だけです。厚労省が五月二十八日に発表した調査結果によると、パートを希望する求職者一人に対し求人は一・五八人分。つまりパート希望者二人に求人は三人分あった勘定です。
しかし、正規社員などパート以外の求人をみると様相は一変します。求職者一人に対し求人は〇・六二人分。つまり正規の就職を希望する人二人に対し求人は一人分しかないのです。これでは「ミスマッチ」と言われても、「では正規の就職をあきらめてパートで我慢しろということですか」と反論したくなります。
雇用の「ミスマッチ」について厚労省が求人側、求職側、そしてハローワークの窓口担当者をそれぞれ調査したことがあります(昨年十二月)。その結果をみても、「ミスマッチ」の原因には求人側の問題があることがわかります。
|
求人をして三週間経過しても求職者の応募がまったくなかった求人条件を調べてみると、平均賃金が他の新規求人より「低い水準」(職業計で二千円)にありました。
また、労働者派遣業や業務請負からの求人が増えて(求人全体の33・9%)いますが、特にこの両業界への就職が低く(全体の半分以下の充足率)なっていました。この点についてハローワークの窓口担当者は、「就業場所や雇用期間など労働条件が不明確であること」をその理由にあげています。
職を求める人が、生活できる賃金や永続雇用など、安心・安定した職場を求めるのは当然です。
こうみてくると、パートや派遣・請負など、低賃金・不安定雇用を求める企業求人のあり方が、「ミスマッチ」の大きな要因になっていることが分かると思います。