2004年6月3日(木)「しんぶん赤旗」
小泉純一郎首相が政権発足当初に道路公団の「民営化」を掲げてから三年余。自民、公明の賛成で成立した道路公団民営化法案は、小泉首相に「改革」を語る資格などまったくないことを浮き彫りにしました。
「ムダな道路は造らない」といっていたのに、高速道路整備計画の残り二千キロのうちきっぱり中止したのは一キロたりともありません。新会社が造らない路線も年間六兆円に膨らんだ「道路特定財源」(税金)で建設する計画で、際限ない建設に道を開きました。
債務四十兆円は「四十五年内に返済」としただけで何の保証もないうえに、国交省は「一万一千五百二十キロ(法定予定路線)の建設費も入る可能性もある」と明言。際限なく膨らむ借金が国民に押し付けられることもはっきりしました。
公団に適用していた情報公開法といった法律さえ民営化で適用外になることも判明。天下りや政官財癒着を温存し増幅させる危険性をはらんでいることが分かりました。
小泉首相は“民営化すればすべてうまくいく”とばかりに「民間にできることは民間に」と繰り返してきました。しかし、「民営化」のねらいが四十兆円の借金を新会社から切り離し、国民に押し付けることにあったことは明りょうです。自民党政治と道路公団によってつくられた巨額の借金を国民に押し付ける「民営化」など許されません。
首相の肝いりで発足した道路関係四公団民営化推進委員会は、民営化の形態をめぐって対立し分裂。「意見書が無視された」と小泉首相に辞表を突きつける委員が相次ぎました。これも「民営化」先にありきで、偽りの「改革」をふりまいてきたツケにほかなりません。
道路公団改革は、首相と道路族の「対決」構図のなかでもっぱら語られてきました。しかし、古い自民党政治を温存・拡大する以外の何物でもなかったことは、「これで高速道路のネットワークの道が開けた」(古賀誠・自民党道路調査会長)と絶賛の声が上がったことが何よりもよく物語っています。
当初は小泉内閣と民営化を競い合っていた民主党は、産業界などの意をくんで昨年の総選挙から方針を転換。四十兆円の借金を国が肩代わりし、通行料金を無料化する法案を提案しました。
これには毎年、二兆円規模の税金を投入しなければならず、年金財源などの確保が課題となっているもとで、税金の使い道の優先順位を間違えたものでした。「借金の肩代わり」は自民党でも公然とは口にできないもので、この点でも自民党の悪政と正面から対決できない姿を示しました。
「これ(民主党法案)は非常に無理があった。受益者負担をどうするか、今までお金を払ってきたのを急にゼロにする。国民から見れば非常に非現実的にとられた」(大江康弘参院議員)との発言が破たんぶりを示しています。
日本共産党は、借金押し付けの「民営化」に反対するとともに(1)整備計画をきっぱり廃止し、新たな建設は凍結、抜本的に見直す(2)四公団あわせて二・五兆円の通行料金収入を借金返済に充て、料金を段階的に引き下げ、将来の無料化に向かう(3)天下り禁止、ファミリー企業を廃止し、四公団を公共企業体として再生させる――ことを提案してきました。
その提起の正しさは、圏央道計画の見直しを指摘した四月の東京地裁の判決や、高速道路など公共事業に依存しない地域経済づくりを主張した参考人の意見陳述などでも裏付けられました。
偽りの小泉「改革」路線とたたかい、国民の願いにこたえる真の改革の道を示せるのはどの党か―道路公団改革をめぐる経過は政党配置でも鮮やかな対比を示しています。深山直人記者