2004年6月1日(火)「しんぶん赤旗」
「学校を外部に開き、活性化する」といって文部科学省がすすめる学校運営協議会制度。今年度中の実施をめざし、現在参議院で法案を審議中です(五月二十日に衆院で可決。日本共産党は反対)。その問題点は――。
法案は、教育委員会が、その所管する学校に学校運営に関して協議する「学校運営協議会」(以下、運営協)を置くことができるようにするというものです。運営協の委員は、地域住民、保護者、その他教育委員会が必要と認める者を教育委員会が任命します。運営協を設置する対象校や委員の任免の手続き、運営協の議事の手続きなどについては、それぞれの教育委員会規則で定めるとしています。
校長は、教育課程の編成などについて基本的な方針を作成し、運営協の承認を得なければなりません。運営協は、学校運営や人事について、教育委員会や校長に意見を述べることができます。
問題の第一は、法文上、運営協の委員に学校教育の当事者である校長・教職員が含まれていないことです。文科省は「地域住民や保護者など外部の意見を学校運営に反映させるのが制度提案の趣旨」だからだと説明しています。
地域や保護者に開かれた学校をつくることは重要です。しかし、学校をよくするには教職員と父母、地域住民が一体となったとりくみが不可欠です。学校の内と外が対立するような制度になれば、現場を混乱させかねません。
アメリカの学校協議会、ドイツの学校会議、フランスの学校管理委員会・評議会、韓国の学校管理委員会には、保護者代表、地域代表とともに教職員代表が加わっています。一九六六年に採択されたILO(国際労働機関)・ユネスコ(国連教育科学文化機関)の「教員の地位に関する勧告」は、「教育政策とその明確な目標を決定するためには…権限ある当局、教員、使用者、労働者および父母などの各団体…との間で緊密な協力が行われなければならない」としています。
校長や教職員が運営協に含まれなくてもよいとする文科省の立場は、こうした世界の流れにも合いません。
問題の第二は、運営協の委員が教育委員会の任命で決まることです。教育委員会の恣意的な選考を許し、運営協が教育委員会の下請け機関となる可能性もあります。教育にはさまざまな考え方があり、公正な基準のもと民主的な手続きをへて選ばれるようにすべきです。現に諸外国では、運営協の委員は選挙で選ばれるのが一般的です。
問題の第三は、運営協に子どもの参加が保障されていないことです。
アメリカのシカゴの学校協議会は、高校の場合は生徒代表が加わっています。フランスの十五―十七歳が通うリセ(国立高等中学校)では、生徒代表五人が加わり、投票権もあります。ドイツでは、生徒参加をすべての州で法定しています。日本でも、地域代表、保護者、教職員、生徒が入った三者協議会をつくり、子どもを中心にした学校改革で成果をあげている長野県辰野高校などのとりくみがあります。
今年一月、国連の子どもの権利委員会が日本政府に次のように勧告しました。「教育、余暇およびその他の活動を子どもに提供している学校その他の施設において、方針を決定する会議、委員会その他の会合に子どもが継続的かつ全面的に参加することを確保すること」。法案はこの勧告のあとに出されていながら、子どもの参加を初めから排除しており、前向きな制度設計となっていません。 坂井希記者