日本共産党

2004年5月31日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

自衛隊のイラク派兵差止めへ

違憲訴訟 北から西から


 イラク戦争が泥沼化しています。イラク人一万人の死者(開戦後)が出て、日本人ジャーナリスト二人が襲撃され死亡するなど数々。国際社会の圧倒的多数は反対です。スペインなど派兵撤退が相次ぐなか、日本は自衛隊派遣に固執しています。国内でも派兵撤退を求める世論が高まり、北から西から運動が広がっています。「自衛隊派兵差し止め・憲法違反の訴訟」が各地でおこされています。北海道、名古屋にみてみました。

北海道 箕輪訴訟に支援の輪

紋別の友達ネット 全国へ呼びかけ人400人余

 箕輪登氏(元郵政相=北海道小樽市)が訴えたイラクへの自衛隊派遣差し止め訴訟の支援の輪が各地へ広がっています。百九人の弁護士が原告訴訟代理人に名を連ね、医師・歯科医師の賛同署名も三百人以上に。札幌からバスで二百八十キロの紋別市に住む鷲頭幹夫さん(54)が呼びかけた「箕輪訴訟に連帯する友達ネットワーク・オホーツク」も、こだまのように道内、全国へ―。

 紋別市は流氷がくるオホーツク海に面した人口約二万八千人の街。訪問の日の午後、鷲頭さんは長靴姿で鶏小屋の中にいました。妻・知子さん(54)と鶏二百羽を飼育、野菜畑を作る農家です。

 「以前は小中学生向けの塾をやり『半農半塾』でした。今は『半農半筆』ですよ」と黒い顔で笑います。地元紙に原稿を書いています。

 鷲頭さんが箕輪訴訟を支援しようと思ったのは昨年末。地元紙に訴訟準備中の箕輪氏のインタビュー記事を載せようと、小樽市の自宅に電話しました。すると箕輪氏が、熱く語り出したのです。

 「『専守防衛』を国是とした自衛隊を、重武装してイラクに派遣するのは憲法と自衛隊法に違反する」「これは平和的生存権の侵害にあたる」と。論旨非常に明快。党派を超え納得できる内容。思わず「連帯します」と言ってしまいました。

 箕輪訴訟支援で「友達ネットワークをつくった」と月刊誌『世界』(三月号)に寄稿すると、道内はもちろん、遠く九州からまで反響が。「紋別からの発信に全国で熱く反応してくれた」と言います。

 一月二十八日の提訴の日、箕輪氏の札幌での記者会見に駆け付け、鷲頭さんはさらに確信を深めます。「首相の理屈が通れば、今後アメリカが世界中で仕掛ける戦争にどこまでも出て行かなければならなくなる」という鷲頭さん。「友達ネット」から賛同者と支援の募金を呼びかけました。

 その輪は、手紙やファクス、インターネットなどで「友達から友達へ」と広がりました。名前を出し募金を募る「呼びかけ人」は道内七十一市町村全国二十二都道府県で四百人を超えました。募金を寄せた人は千五百人で計百万円超です。

 各地からの手紙には「主権者として、首相の憲法違反を許しておけない」「自分の気持ちを表わせる物がやっと見つかった」など、連帯の声がつづられています。

 箕輪氏らが駆け付けた四月二十九日の紋別講演会。二十代から七十代まで三十人がチケットを売り歩き、参加者は二百人になりました。その感動を広げようと、当日のビデオを作製中。「呼びかけ人に送ります。箕輪さんの並々ならない決意と、『道産子(どさんこ)訴訟』の歴史的な意義を感じとってほしい」。北海道総局・富樫勝彦記者

名古屋 提訴次つぎ原告2363人

戦争しない国守りたいの一念で

 名古屋地裁に二月二十三日に提起されたイラク派兵差止訴訟は、自衛隊のイラク派兵は憲法九条違反として国に対し今後の派遣の差し止めなどを求めた最初の集団訴訟です。原告は四月の第二次提訴を合わせ二千三百六十三人にのぼっています。インターネットなどで昨年十二月末から提訴を呼び掛けたところ北海道から沖縄、海外まで輪が広がりました。現在も訴訟に加わりたいと名乗りを上げる人が相次ぎ、第三次提訴が予定されています。

 訴状は、法律文書としては異例の「です、ます」調で丁寧にイラクの現状から、派兵の無法、違憲性を説明しています。「多くの人に参加してもらうために、いかに分かりやすくするかを考えた」と内河惠一弁護団長は話します。

 弁護団には名古屋市の弁護士の十人に一人に当たるという八十二人が参加。弁護団事務局長の川口創弁護士は「自衛隊を引き揚げさせることが目的。撤兵を求める世論を広げていきたい」と話していました。

 訴訟の呼びかけ人で原告の会代表の池住義憲さん(59)は提訴後の会見で「次の世代のために悔いを残したくないと思っています。裁判所には逃げずに正面から憲法判断してほしい。そして、市民が声を出すことで司法を動かしていきたい。多くの人の声を合わせ、戦争をしない国、憲法九条を守っていきたい」と訴えました。

 原告の人たちは「戦争は最悪の人権侵害。イラク派兵もこれに連なると思う」「私たちは人を殺す方にきてしまっている。広い人に、このことを考えてほしい」「裁判の早期打ち切りを許さない運動をつくっていこう」と思いを語っています。

 六月十八日には名古屋地裁で第一回口頭弁論が開かれます。原告の会では、それに先立つ十二日に名古屋市内でイラク人質事件で拘束された今井紀明さん(NGO代表)と郡山総一郎さん(ジャーナリスト)を招いて講演会を開きます。東海北陸信越総局・竹森敏英記者


各地の提訴の取組み

 北海道から始まった訴訟は名古屋、東京、関西そして山梨へと広がりました。

 訴訟は(1)自衛隊のイラク派兵差し止め(2)イラク派兵の憲法違反確認(3)原告に1万円の慰謝料支払い―を求めています。

 原告は個人あるいは原告団が訴訟をおこし、第1次、2次へと原告を増やし、支援の取り組みも前進しています。各地の状況は次のとおりです。

自衛隊のイラク派兵差止北海道訴訟

 ・3月29日に第1回口頭弁論

 連絡先=北海道合同法律事務所内

 電話011(231)1888、ファクス011(231)1785

自衛隊イラク派兵差止訴訟・名古屋

 連絡先=名古屋学生青年センター内

 電話052(781)0165、ファクス052(781)4334

イラク派兵違憲訴訟の会・東京

 ・原告 100人余めざす。毎日・毎日提訴運動(リレー方式)

 ・提訴の日 3月17日に前田哲男さん(東京国際大学教授)からスタート、42人(25日現在)に

 連絡先=四谷総合法律事務所内田さん気付

 電話03(3355)2841、ファクス03(3351)9256

自衛隊イラク派遣に反対する訴訟・関西

 ・原告 小田実(作家)、鶴見俊輔(哲学者)さんら20人(第1次)

 ・提訴の日 4月30日に第1次20人、6月に第2次を予定

 ・支援状況 弁護士166人で弁護団発足

 連絡先=大手前法律事務所内

 電話06(6945)0308

「派兵は決定的違憲」市民訴訟の会・山梨

 (7月予定)

 ・原告 小出昭一郎(東大名誉教授)さんら210人、賛助会員数111人

 ・提訴の日 7月初めの予定

 連絡先=同会事務局

 電話・ファクス0551(25)4500


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