日本共産党

2004年5月31日(月)「しんぶん赤旗」

子どもたちを苦しめる

石原東京都政の

「日の丸・君が代」強制


 公立学校の卒業式・入学式への「日の丸・君が代」の強制を進める石原都政、東京都教育委員会は、「君が代」斉唱時に生徒の多くが起立しなかった学校の教職員は「指導不足」だとして、厳重注意などにする処分を初めて行いました。子どもの内心の自由をいっそう深く侵す都教委の暴走に、批判が広がっています。東京総局 室伏敦記者

 今年の卒業式・入学式で、都教委は職員を各校に派遣して、「日の丸・君が代」の実施状況を監視。その結果、区立中学校一校を除き全校で、都の「実施指針」どおりに舞台壇上正面に「日の丸」を掲揚し「君が代」を斉唱したと、二十四日の都教委で、誇らしげに発表しました。

民主党都議が生徒に「立て」

 「実施指針」とは都教委が昨年十月に通達した、学校行事での「日の丸・君が代」の扱いを十二項目にわたり事細かに定めたもの。子どもたちを主役に、各校でさまざまな工夫をこらした式を行ってきた伝統を無視して、「日の丸・君が代」主役の式を無理やり押しつけています。

 式では異常なことが起こりました。都立板橋高校では、「日の丸・君が代」強制を一貫して要求している民主党都議が来賓として卒業式に出席し、「立て」と生徒を怒鳴りつける場面もありました。

 「実施指針」の通達後、ある学校では校長が、「国歌斉唱時に起立しない生徒については、担任が保護者に起立していないことを伝え、理由について聞くこと、その内容を管理職に報告すること」と発言。卒業式後、起立しなかった生徒から理由を聴取した学校もあります。

 ある都立高校の男性教諭は、「深刻さを感じた生徒が、『先生はどうするの』と心配して聞いてきました」といいます。「式のあとその生徒は、『先生、おれ立たなかったよ』といっていました。『(都教委は)今まで一度も学校を見に来たこともないくせに、なんで日の丸のときだけきて、命令するんだ』と反発していた」といいます。

都教委会議で続出する暴論

 都教委の「日の丸・君が代」強制が、憲法の保障する思想・内心の自由や、教育への不当な支配を禁じた教育基本法に反するものであることはいうまでもありません。

 政府・自民党は、教育基本法に明記された民主的な教育の理念と原則を敵視し、「日の丸」「君が代」の押しつけをテコに、国家権力による学校教育の支配をねらってきました。

 しかし、そうした勢力が「日の丸・君が代」法を一九九九年に強行したさいにも、政府自身が「日の丸」の「義務付けなど考えていない」(同年六月二十九日の衆院本会議、小渕恵三首相)と答弁せざるをえなかったのです。

 ところが、「政府答弁が間違っている。だから文科省はきちんとやりなさいといっている」(鳥海巌・都教育委員)と、政府見解さえふみこえて、全国でも例のない強制に、都教委は乗り出しています。

 この鳥海氏は、石原知事と同じ一橋大学出身で、石原人脈として知られる財界人。同氏をはじめ、都教委の六人の委員(別表参照)は、都教委の会議で、人権無視、教育の条理を踏みにじる暴論を繰り返しています。


東京都教育委員

 ・清水司東京家政大学理事長(都教育委員長)

 ・国分正明日本芸術文化振興会理事長

 ・鳥海巌元丸紅会長

 ・米長邦雄氏(棋士・永世棋聖)

 ・内館牧子氏(脚本家)

 ・横山洋吉都教育長


「がん細胞」「ばかな人」都教委内でこんな発言

 清水司都教育委員長 「(『日の丸・君が代』実施は)大事なことですからね。日本人なんだから。日本人じゃないということを表明するなら話は別ですけど」(三月三十日、教育委員会)

 鳥海巌教育委員 「(『日の丸・君が代』に反対する教職員は)半世紀の間につくられたがん細胞のようなもの。少しでも残せばすぐ増殖する。徹底的にやる」(四月九日、教育施策連絡会)

 国分正明委員 「(教職員の)責務と個人としての思想信条の自由は別」(同)

 米長邦雄委員 「(卒業式・入学式で教職員に)職務命令書を出さなかった校長がいる。規律違反だから(都教育庁)指導部長が呼びつけて、高等学校教育指導課長の前でわびさせることをやってもらえるか」(五月二十四日、教育委員会)

 内館牧子委員 「(職務命令を出さなかった校長たちは)ばかな人たち」(同。米長氏の発言に続けて)


起立しなかったら先生を処分

生徒の内心の自由侵す

 都教委は四月までに「君が代」での不起立などを理由に教職員二百六人を大量不当処分しています。

 これに続き、二十四、二十五両日発令した第三次処分は、「君が代」斉唱時の不起立やピアノ演奏拒否などの三十九人が戒告、卒業式と入学式両方で「職務命令違反」とされた三人が減給十分の一(一カ月)の処分とされました。

 同時に、今回の処分で重大なのは、「不適切な言動」、「指導不足による生徒の不起立」や「不参加」、「定められた職務場所からの離脱」などを理由に、六十七人が厳重注意などの処分をされたことです。

 生徒が起立しなかったことを理由に先生が処分されるという構図は、結局、生徒が自分の判断で起立しないことを認めず、生徒の内心の自由そのものを踏みにじるものへ強制をいっそうエスカレートさせたものです。

 都教委は、処分を受けた教職員と、該当校の校長、副校長、主幹を研修センターなどで研修させるとしています。


立ちあがる教師、親、都民

声明や集会開催

 都教委の暴走に、抗議と批判の声が幅広くあがっています。

 処分された教職員百四十九人が都人事委員会に不服審査を請求。東京都高等学校教職員組合、東京都障害児学校教職員組合、東京都教職員組合が相次いで抗議声明を発表しました。

 教育関係者や女性、平和、法律団体、労働組合が次々と抗議声明や、「日の丸・君が代」強制反対や教育のあり方を考える集会を開催。六月十二日には、「学校に自由の風を!」集会が、ジャーナリストの斎藤貴男さん、小森陽一東京大学教授、西原博史早稲田大学教授らの呼びかけ、三十八団体の協賛で、東京・中野区の、なかのZEROホールで開かれます。


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