2004年5月31日(月)「しんぶん赤旗」
小泉「改革」路線の“目玉”とされてきた道路公団民営化法案が一日の参院国土交通委員会で採決されます。わずかな参院での審議でも「改革」の名に値しないことがいよいよ明らかになっています。
政府は、九千三百四十二キロの高速道路整備計画の残り二千キロは採算性などから見直し、「ムダな建設に歯止めをかけた」と説明。二千キロのうち七百キロは税金投入の「新直轄方式」で建設し、百四十三キロは「抜本的に見直す」といってきました。
ところが日本共産党の富樫練三議員の追及に、その百四十三キロのうち百八キロは「一般国道を活用して整備」(石原伸晃国交相)などと規格の見直しなどをして税金で建設する考えを示しました。結局、見直し区間はわずか三十五キロ。「歯止めをかけた」などといえません。
その三十五キロ(第二名神高速の二区間)については日本共産党の宮本岳志議員から、名神高速と「京滋バイパス」が並行して走っておりムダだと追及されてようやく、石原国交相が中止もありうるとのべました。
民営会社が造らない路線を税金投入で建設する「新直轄方式」が、予定の三兆円分より膨らむ危険性も浮上しました。
富樫氏が、民営会社が建設しない路線が増えて予算が不足したらどうするのかと質問。石原国交相は「新直轄方式による整備も含めて決めていく」と税金投入を追加する考えを示したのです。
「国民負担は最小」にするという政府の言い分は破たんしました。
四十兆円にのぼる債務を「四十四年で返済」するという計画の危うさも鮮明になりました。
政府の返済計画は九千三百四十二キロの建設が前提です。ところが、国交省の佐藤信秋道路局長は、さらなる建設計画である一万一千五百二十キロ(法定予定路線)の建設費が「(返済計画に)入ってくることはありうる」と答弁。債務が四十兆円以上に膨らむ可能性を認めました。
参考人質疑で明治大大学院の山口不二夫教授は、政府の返済計画は収入の増加を見込んでいるが、今後建設する路線は不採算路線ばかりで、維持管理費も増える可能性が高いと指摘。「実現は不可能で、机上の空論」と批判しました。
これまで公団に適用されていた情報公開法、官製談合防止法や入札契約適正化法が民営化されるとどうなるのか。
富樫氏の追及に佐藤局長は「適用除外になる」とのべ、公団より透明性が後退することを参院でも改めて認めました。
参院審議のさなか、細田博之官房長官が道路公団の事実上のファミリー企業・日本道路興運から運転手給与三千百万円を肩代わりしてもらっていた問題が発覚。同社には、国交省から十八人、公団から四人が天下り。公団から受注した百万円以上の仕事の七割以上を競争入札のない随意契約で獲得しています。
ところが、石原国交相は「公団改革とは関係ない」と疑惑の解明さえ拒否しました。
参考人質疑でジャーナリストの堤和馬氏は「(天下りは)民営化すれば単なる再就職だと隠ぺいされる。政官業癒着は温存され、公団より悪くなる」と批判しました。
どの問題でも国民の願いに背く問題点が明らかになった道路公団民営化法案。富樫議員は、(1)道路整備計画を凍結・抜本的に見直す(2)債務を国民に転嫁せず計画的な返済をすすめる(3)天下り禁止、ファミリー企業禁止など政官業の癒着を断ち切る――ことこそ本当の改革だと強調しました。