2004年5月31日(月)「しんぶん赤旗」
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自民・民主の二大政党制をめざし、約四十億円を目標に企業献金あっせんを再開した日本経団連(奥田碩会長)が、献金“自粛”の赤字企業でも株主の追及を恐れず献金できるとする手法を会員に教えていたことが本紙入手の資料でわかりました。
日本経団連はさる三月二十三日、弁護士を招き、「企業の政治寄付と株主への対応に関する講演会」を開きました。
本紙が入手した講演レジュメなどの資料や参加者の話によると、講演会で弁護士は準大手ゼネコン・熊谷組の元社長に政治献金の返還を求めた福井地裁判決(昨年二月十二日)を取り上げました。
同判決は、企業に欠損が生じた場合は献金の必要性や経営状態を審査して慎重に判断する必要があったとし、慎重に判断することなく献金した元社長は、「善良なる管理者」としての取締役の注意義務に違反した(「善管注意義務違反」)と判断しました。この判決は、その後、赤字企業が献金を“自粛”する大きな契機となり、政党への点数評価をもとに従来の二倍近くの献金をめざす日本経団連の障害になっていました。
しかし、講演レジュメは、この判決の「正しい理解」を強調。判決は、(1)会社に欠損が生じて以後の政治献金を直ちに違法とはいっていない(2)慎重に判断することを要求しているだけ――とし、「財務・配当その他に問題がある場合には、その点を認識して、通常の判断よりは慎重な検討を経た上で判断したものであれば適法」と結論づけています。
その上で、判断過程で「取締役として誠実に経営判断したことを書面(証拠)で明らかにしておく必要がある」などの対応策までアドバイスしています。
講演会に参加した企業の幹部は「赤字企業でもよく注意すれば、献金をするのに恐れることはないという内容だった。『自発的政治寄付』といいながら、実際は、これまで献金を自粛していたような企業にまで献金をださせようとしている」と日本経団連の姿勢を批判しています。
赤字企業の献金 政治資金規正法では、三事業年度以上にわたり継続して欠損を生じている企業は、当該欠損が埋められるまで政治献金をしてはならない、と定めています。しかし熊谷組株主代表訴訟の福井地裁判決で、一事業年度で欠損を生じている企業の献金について「善管注意義務違反」が認められたことから、赤字企業の間で献金を“自粛”する方向になりました。小泉首相も昨年二月、日本共産党の佐々木憲昭議員の衆院予算委員会での追及に「無配の会社から(献金を)求めない態勢にしなければならない」と答弁しています。