2004年5月28日(金)「しんぶん赤旗」
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「キャー」という悲鳴にも似たファンの黄色い声援がコートを包みます。アイドルグループの歌が大音量で流れ、「スティックバルーン」と呼ばれる応援グッズをみんなでたたき「ニッポン、ニッポン」の大応援。DJが「いくぜー、ニッポン」とさらにあおる――。
連日、熱戦が繰り広げられているバレーボール五輪世界最終予選の会場の様子です。あまりの大きな音に耳栓をする記者も現れるほど。コンサート会場さながらで、これが本当に国際的なスポーツ大会の場なのか、との思いが強くなります。
こうした演出は「すべてテレビ局側の判断です」(日本バレーボール協会広報)。地元のチームやひいきの選手を応援するのは自然ですが、問題なのは、これが、大会の主役であるはずの選手に影響を与えていることです。
日本の男子チーム、小林敦主将は「(始まる前に)ショーなどがあって、ウオーミングアップしてから試合までの時間が長く、体が冷える」と話しました。オーストラリアのダニエル・ハワード主将は「あまりの声援に神経質になった」といいます。
本来なら、選手が集中して試合ができる環境を提供するのが国際バレーボール連盟や日本協会ら主催者側の務めです。しかし、運営の多くにテレビ局の意向が働き、現場に影響しているのが現状です。
たとえば、試合時間。
今大会、試合は午前中から行われ、他のチームは時間が毎日違います。ところが日本だけはテレビ中継の関係で、すべて午後6時からスタート。そして日本戦だけは、2、3セットの間に、10分間のタイムアウトが設けられ、ショーが行われます。
テレビ局の要請で時間が変わるのは日本だけにとどまりません。女子の韓国戦でも、地元韓国のテレビ局の要望で、開始を15分遅らせた試合もありました。
また今大会、日本は男女ともに開催国として特権を持っていました。予選も免除されたうえ、2試合の日程と対戦カードを指定できるのです。
日本女子は5日目の対戦相手に韓国を選び、4日目に韓国対イタリアが対戦するよう設定しました。これは、自分たちが対戦するまえに、韓国がイタリアとたたかうことでデータを引き出せると考えたからです。
男子は対戦相手に、1日目のアルジェリア戦と最終日の韓国戦を選んでいます。イランの朴監督は「日本はめぐまれた環境でやっている」と話しました。
スポーツはルールにのっとり、どのチーム、どの選手にも平等であることで成り立っています。特に4年に1度の五輪は選手にとって大事な大舞台。そこへの出場を決める場が不公平なものであれば、互いに尊重しあうどころか、不満や憎しみさえ残りかねません。
韓国の金監督は、「韓国の協会は大きな大会を開く財源はない」と話しました。日本は、他のアジアの国々よりもバレー人気が高く、スポンサーもつきます。大会を開く環境が他国よりあるのです。だからといって、日本有利の大会運営にするのではなく、開催国として公平に臨む責任があるのではないでしょうか。
国際連盟や日本協会は、テレビの圧力に屈せず、選手を第一に考えた運営、公平な運営に改善することが必要です。
栗原千鶴記者