2004年5月25日(火)「しんぶん赤旗」
「古里の山を守ろう」と、各地の勤労者山岳連盟(労山)が取り組んできた運動は、日本の山岳自然保護に先駆的な役割を果たしてきました。こうした運動の蓄積が実り、トイレ問題などで政府から積極的な回答を引き出しました。
青山俊明記者
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労山は14日に環境省、林野庁と交渉。北海道から参加した道央地区連盟の今野平支郎さんは「地元の運動とつなぐことができ、実現できる可能性が見えました」と手ごたえを語ります。
道央地区連盟は、夏季の3カ月間で2000人以上が入山し、過剰利用が深刻な問題になっている日高山脈・幌尻岳で調査、清掃活動を続けてきました。
今回の交渉で、今野さんは環境省に幌尻山荘付近のし尿量を示して、トイレの改修とともに携帯トイレについて質問。「環境省は使用後の携帯トイレは各自が持ち帰れというが、利用者の半数は本州からの登山者。持ち帰りは現実的でない」と、登山口での回収など現状の改善を求めました。また、頂上までの間に携帯トイレを使える場所がない問題も指摘しました。
現地の実情を踏まえた提案に、担当者も熱心に耳を傾け、北海道の管理が前提だとしながらも、「道が国に要求を上げれば、補助することも可能。こちらからも道に通知する」と前向きに答えました。
また、林野庁との交渉では、道内の大規模林道計画が再評価の対象になり、中止の可能性も出てきた事実も明らかになりました。
大阪府連盟は、4年間にわたって府内の山岳地域を含める約1800カ所でNO2(二酸化窒素)を測定。その結果、府下で発生したNO2は西風に乗って山を越え、奈良県や京都府、兵庫県東部に移動することが明らかになりました。交渉で府連盟は、このデータをもとに京阪神地域で発生したNO2、SO2(二酸化硫黄)が、奈良の大峰や大台ケ原など広範な森林に立ち枯れを起こしている問題を指摘しました。
奈良県連盟も大峰山脈で6年間にわたって立ち枯れ調査を継続。原生林伐採やシカの食害とともに、酸性雨による影響も考えて総合的な調査を求めました。多くの写真や観測データに基づく説明に、環境省も「酸性雨の影響も含めて検討したい」と、関係を認めました。
全国連盟の斎藤義孝理事長は「労山の長い自然保護分野の活動が評価されているんだと思いました」と交渉の意義を話しました。
多くの登山者の共感を得て、労山の活動は、行政を動かす力になっています。