2004年5月24日(月)「しんぶん赤旗」
小泉内閣・自公政権の合併押し付けに対して、自立の道をめざす自治体が各地で増えています。このなかで新潟県津南町と、福島県磐梯町のとりくみを紹介します。
新潟県津南(つなん)町は、二〇〇二年十一月まで十日町広域圏合併任意協議会設立準備会(六市町村)に参加していましたが、離脱し、町民多数の意思にもとづき、「自律」の町づくりを進めています。
そこに至る経過では、全世帯に六市町村の行政内容の比較や合併した場合のメリット・デメリットを明示する資料を配布。全集落で行われた町当局・議会共催による住民との「町づくり懇談会」で出された意見と町の回答も改めて配布しました。
懇談会では、六市町村合併では四十八億円、三町村合併では二十億円の地方交付税が減額になるなどの財政シミュレーションを明示。「合併で役場がなくなれば旧中心地の灯が消える」「除雪体制が弱くなるのでは」など、合併に否定的な意見が多く出ました。
同年十二月に実施した、十八歳以上を対象としたアンケート(89%回答)では、「合併した方がよい」(23・5%)に比べ、「合併しない方がよい」が57%となり、圧倒的多数を占めました。
こうした結果をうけ、議会は自立の道を進むことを決め、小林三喜男町長は〇三年一月、「民意を尊重し、町の新たな出発点として、町政は町民のためにあることをふまえ、個性ある町政を進めていきたい」と表明しました。
まず役場職員全員が自分の仕事を点検し、その上で十一の分野別チームに分かれ、十七―八回の会議を重ね町づくり施策を議論。くらし、農業、観光など十一項目の施策にまとめました。その「新生津南町『自律に向けた町づくり』中間報告」が五月に全戸に配布されました。
中間報告では、小泉内閣の「三位一体」の税財政改革の影響も考慮した二十年後までの財政シミュレーションを提示。「自律に向けての目標と理念」の項では、(1)四季折々の自然の中で安心して豊かに暮らせる町、住民一人ひとりが大切にされる町づくり(2)住民の暮らしを支える町(3)住民参加と協働の町(4)役場職員は住民全体の奉仕者―の四項目を明示しました。
「将来ビジョン」では、具体的に各チームのキャッチフレーズと目標を掲げ、これらをもとに六月から集落懇談会を開き、意見交換を始めます。
農業委員の中田人士さん(61)は「津南は農業立町であり、国営山麓(さんろく)開発でできた広大な農地という財産もあり、農業を発展させるためにも『自律』を決めたことは歓迎です。もう一つ大きな産業をつくり、若者が定着できる町づくりをしてほしい」と期待を語ります。
日本共産党町議団(二人)は、合併の問題点を議会質問で再三指摘。毎週発行される「町政レポート」でも、合併にかかわる情報を三十回以上町民に提供してきました。こうした中で大口武町議が、合併対策特別委員会の副委員長に選出され、積極的に発言しました。
大口町議は「日本共産党として、今後も『自律』に向けた町づくりの問題で積極的に提言していきたい」と語っています。新潟県・村上雲雄記者
「会津磐梯山(ばんだいさん)は宝の山よ」の民謡で有名な、磐梯山のふもとに位置する福島県磐梯町。人口四千人、農村地域がのどかに広がる小さな町ながらも、一八八九年以来続く磐梯山の名を冠した町名に住民が親しみを持つ、歴史と文化のある町です。
政府の押し付けで市町村合併が進む中、磐梯町を取り囲むように複数の合併の枠組みが話題になりましたが、三月三十一日に臨時町議会で五十嵐源市町長が合併をせず、自立のまちづくりをすることを表明しました。
同町の合併問題検討委員会の合併すべきではないという答申を受けた上で、町名に町民が親しみと誇りを持っていることや、地域文化、地域医療のことを考慮しての決断でした。
これまで「合併するところも、しないところも支援していく」としていた県も、「合併するところにだけ一億円の財政支援をする」という予算を組んだ矢先。自立の道は易しいとは思えない状況でした。
しかし五十嵐町長は、「合併しないからといって特別なことが必要だということはない。いまの時代、合併しようがしまいが、みんなで協力して乗り切らなければならないことに違いはない」「ただ切り詰めればいいというものではなく、発想の転換が必要」と言い切ります。
町長が自立のまちに向け打ち出しているまちづくりの政策は、人づくり教育と若者の定住、企業との共生、役場職員が百パーセント能力を発揮できる環境、保健・医療・福祉の推進など。
保育園の充実や、夕方まで幼稚園児を預かれる構想など、特色ある教育環境をつくり、若者の定住化を狙います。
町内には日曹金属化学会津工場、カメラレンズのシグマ会津工場などがあります。企業との対話を重ね、工場の海外移転ではなく、会津工場の充実などを訴えました。
今後こうした自立のまちづくりを中心とした政策を、町の計画としてまとめる予定です。
日本共産党は、市町村合併が大きな問題となって以来、住民の中に入ってアンケート調査をするなど、自立のまちづくりを訴えてきました。議会では鈴木和意、佐藤貞夫の両党町議がくり返し質問に立ち、昨年夏の議員研修では党町議の提案で、やはり自立を選んだ長野県栄村、泰阜村を調査しました。
鈴木議員は「ひきつづき自立のまちづくりに向けて積極的に提案をして、町民参加のまちづくりとして実現するように力を尽くしていきたい」と話しています。福島県・町田和史記者