2004年5月22日(土)「しんぶん赤旗」
国民から選ばれた「裁判員」が職業裁判官とともに、殺人など重大な刑事事件の被告人を裁く裁判員制度法案が二十一日、参院本会議で賛成多数で可決、成立しました。関連の刑事訴訟法「改正」案も賛成多数で可決、成立。日本共産党は裁判員制度法案に賛成、刑訴法「改正」案には反対しました。裁判員制度は五年の準備期間を経て、二〇〇九年から施行される予定です。
裁判員制度は、政府の一連の司法制度改革の中心に据えられており、国民の社会常識を反映させ、公正な刑事裁判を実現することを目的に、政府の司法制度改革審議会が〇一年に導入を決めました。
同制度は衆院で守秘義務の罰則を軽減するなどの修正が加えられましたが、守秘義務の範囲や内容があいまいな上、今後国民の参加意識をどう高めていくかなど、施行まで多くの課題が残されています。
選挙人名簿で無作為に選出された裁判員は国民の義務となります。しかし、七十歳以上のお年寄りや学生・生徒、病気や育児・介護など、やむを得ない理由がある人については、裁判員になることを辞退できます。政府は、政令で宗教上の戒律で人を裁けない人など思想信条による辞退も裁判官の判断によっては認める方針です。
裁判員制度法 選挙人名簿登録者から無作為に抽出された二十歳以上の国民が対象。死刑または無期懲役など重大事件を扱い、有罪・無罪、量刑を決定します。原則、裁判官三人、裁判員六人の合議体で審理します。理由なく欠席した場合は十万円以下の過料。また、裁判員が事件関係者のプライバシーや有罪・無罪に関する個人の意見、数などの秘密を外部に漏らすと、「懲役六月以下または五十万円以下の罰金」が科されます。二〇〇九年施行の予定。付則では法施行後、三年後に見直しを行います。 |
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裁判員法案・刑訴法改正案成立について日本共産党国会議員団法務部会長の井上哲士参院議員は二十一日、談話を発表しました。要旨は次の通りです。
一、裁判員法案は、司法への国民参加の制度として積極的な意義を持つものである。わが党は、長年にわたって職業裁判官が独占してきた刑事裁判に、国民の常識を反映させる制度として、政府案の積極的な意義を評価して賛成の態度を取った。なおわが党は、可決には至らなかったが、より良い制度とするため修正案(国民の司法参加をすすめ被告人の権利を守る立場から裁判員の数を六人から九人へ増やす、守秘義務の範囲を限定し罰金刑に限定する等を内容とする)を提案した。
一、刑事訴訟法改正案は、被疑者段階での国選弁護制度の創設などわが党や国民が要求してきた改善点はあったものの、開示証拠の目的外使用の禁止、訴訟指揮権の強化など被告人・弁護人の正当な権利を侵害しかねない重大な問題点を持つものであった。わが党は、この問題点を取り除く修正案を提起したが、否決されたため本案に反対の態度をとった。
一、裁判員制度を真に国民の中に定着した制度として運用していく上で、課題は山積しており、とりわけ国民が参加しやすい制度にするためのさまざまな環境整備が重要である。また、今回の改正で見送られ、現在検討が進められている取り調べの可視化や証拠の全面開示など、裁判員制度を機能させ被告人の利益を図る刑事司法制度の一層の改革が求められている。さらには、今回新たに持ち込まれた問題点を改善していくことも求められる。わが党は、裁判員法の五年後の施行に向けて、これら課題の実現のため、引き続き奮闘する決意である。