日本共産党

2004年5月18日(火)「しんぶん赤旗」

裁判員制度・刑事訴訟法「改正」案

審議大詰め 何が論点に


 司法制度改革の柱と位置づけられている裁判員制度法案と裁判手続きを決める刑事訴訟法「改正」案の参院法務委員会での審議が大詰めを迎えています。参院での審議をもとにおもな論点を見ました。

《裁判員制度》

 大きな論点のひとつは裁判官と裁判員の比率を三対六にすることへの批判です。

 日本共産党の井上哲士議員は同委員会で、国民参加を裁判官の飾り物にしないためには、諸外国の例をみても裁判員を裁判官の三倍程度にする必要があると主張しました。

 参考人質疑のなかでは、模擬裁判を実施した大学法学部の調査でも、裁判員が多いと委縮せず意見が活発になるという調査結果が出ていることが明らかになりました。

 また、評決についても、“一人以上の裁判官をふくめた過半数で決める”という法案にたいし、反対意見が出されました。日弁連は、全員一致か三分の二以上の特別多数決を求める意見が多数であり、とくに死刑判決は全員一致にすべきだ、という意見を参考人質疑で主張しています。

 「やむを得ない事由として裁判官が認めた」場合に許される裁判員辞退も論議されました。

 井上議員は「宗教上の戒律で人を裁けない」などの例外はあるとしても、国民が裁判員をやりやすくする条件をつくったり、啓もうに力を入れるよう要求。法務省は施行までの五年間の期間で宣伝啓もう努力をすると答えました。

 伊藤和子参考人(弁護士)は、介護・育児をしている人についても託児所など環境整備を充実して参加しやすくすべきだ、との意見を述べました。

 裁判員の「守秘義務」についても、懲役六月以下または五十万円以下の罰金とした罰則は重すぎる、という意見が審議で強く出されました。

 日弁連、新聞協会は進行中の事件はともかく、裁判終了後まで守秘義務で拘束するのは行き過ぎと主張しました。被告人や他の裁判員のプライバシー等を守るのは当然としても、自分の意見、判決の事実認定、量刑の当否まで守秘義務化するのは、制度理解への妨げとなる、と指摘しています。

《刑訴法改正案》

 日弁連は、自白の強要が裁判での事実認定に時間を費やす原因になり、長期裁判をもたらしていると指摘。取り調べをガラス張りにし、ビデオでの録画、録音を活用した可視化をすすめることが世界の趨勢(すうせい)であり、それで冤罪(えんざい)など誤判を防ぐことができると訴えています。自由法曹団も同じ内容を要請しています。

 自由法曹団、青年法律家協会は、検察側が明らかにしない証拠の中にも被告人の無罪を証明できるものがあり、少なくとも証拠の一覧表は弁護士に示すことを義務づけるべきだ、と要請。井上議員は「裁判員が目で見て、耳で聞いて分かる直接主義、口頭主義にしなければならない」と主張し、現行の「調書裁判」を抜本的に改革する必要性を訴えました。

 また、開示証拠の「目的外使用」を禁止する――という規定にも強い反対意見が主張されました。

 自由法曹団は、要請のなかで松川事件のように、公開された訴訟記録を検討することで真実を訴え、公正な裁判を求めることができて、冤罪を晴らした事件は多くあると指摘。新聞協会も参考人質疑で「報道機関として正確な取材をするために証拠類をコピーすることすらできなくなる」と主張し、報道の目的に支障をきたすと危ぐを表明しました。

 米田 憲司記者

カット

裁判員制度法 選挙人名簿で無作為に抽出された二十歳以上の国民が殺人など重大な刑事裁判の審理に参加。原則、裁判官三人、裁判員六人の合議体で有罪や無罪の判断や量刑の決定を行います。理由なく欠席した場合は十万円以下の過料に処せられます。また、裁判員が事件関係者のプライバシーや有罪・無罪に関する個人の意見、数などの秘密を外部に漏らすと、「懲役六月以下または五十万円以下の罰金」が科されます。付則では法施行後、三年後に見直しをおこないます。二〇〇九年施行の予定。



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