2004年5月17日(月)「しんぶん赤旗」
全国の自治体で、公立小中学校の学級定員を、独自に国の標準(四十人)より少なくする「少人数学級」が急速にひろがっています。本年度は、昨年度の一・四倍の四十二道府県、全都道府県の九割までになりました。一部の学年、学校に限定したり、必要な教員増を行わないなど課題も多く残されていますが、少人数学級のひろがりは「いまこそ国の責任で少人数学級の早期実現を」の声と運動を高めています。
山形県は、小学校の少人数学級編成「さんさんプラン」(二十一人から三十三人)の対象学年を低学年から段階的に拡大し、三年目の今年四月から小学校全学年が対象になりました。
県が二〇〇三年十二月に実施校でおこなったアンケートで、小学四年児童の父母は「教育効果はあがっているか」との設問に54%が「あがっている」と回答。校長を対象にした「子どもの姿から感じる教育効果」(複数回答)について、「欠席の減少」が70%(前回二〇〇二年七月時比28ポイント増)、「学級のまとまり」が80%(同13ポイント増)に達しました。県は「年ごとに着実に効果があらわれている」(教育庁)とみています。
山形市内の小学校で、今年度から少人数学級となった学級(六年生)の担任は「一人ひとりに目が届くようになったし、教室が広く使えるようになって授業を工夫する幅が増えました。授業参観にきた父母も教室のかわりように驚いていました」といいます。
「父母のみなさんといっしょに県庁へ通ったものです」と感慨深げに語る別の小学校の男性教諭(52)は、「授業時間のなかで全員が発言できる、話し合いができるようになったことで、子どもたちは他者を思いやる気持ちが大きくなったように思います。教師にとっては、やれなかったことがやれるようになった。子どもたち一人ひとりとより密接にかかわったり、教材研究する時間が増えたんです」といいます。
三十人学級を求める運動は、九〇年代半ばから教員と父母、地域の草の根の県民運動として大きく広がりました。
高橋和雄県知事は今年四月、中学校への少人数学級導入を支援する考えを表明しましたが、県も市町村も、財政難のもとで教員増や教室確保をどうするかは切実な課題になっています。
県教職員組合、全山形教職員組合は、中学校への三十人以下学級導入を毎年の春闘・秋闘などで要求しています。日本共産党も、笹山一夫県議が昨年二月の県議会で、県委員会がことし一月の予算要望で、中学校での少人数学級導入を要求してきました。
県教組山形地区支部の櫻井啓志支部長は、「中学校への少人数学級導入は悲願です。県には加配教員の予算を確保したうえで少人数学級を拡大するよう求めていきますが、根本的には国の財政的な保障が必要です」と話しています。
山形県・高橋宏治記者
大阪府は、今年度から四年間で小学校一、二年生の三十五人学級を導入します。今年は経過措置として、一年生のみ三十八人学級となりました。
二月の知事選で再選された太田房江知事が公約に入れていたものですが、ここに至るまでには父母、教職員、教育関係者と日本共産党のねばり強い運動がありました。
府内には、府政にさきがけて少人数学級を導入した自治体がいくつかあります。岸和田市では、昨年四月から小学一年生の三十五人学級がスタートしました。
実施後のアンケートでは「兄姉のときと比較して、先生の目が行き届いてありがたい」「児童の細々した日常生活の話をていねいに聞き、子どもの思いが今まで以上によくわかる」など父母、教職員双方から歓迎の声が多数寄せられました。
「岸和田に三十人学級をすすめる会」の朝倉忠事務局長は、「二〇〇一年に池田市の大阪教育大付属池田小学校で起きた児童殺傷事件を機に、より良い環境の下で子どもたちの健やかな成長をと願う機運が盛り上がり、署名など幅広い運動をつくれたことが大きかった」と振り返ります。
同年の市長選では、市民の強い要求を受けて現職の原のぼる市長が市独自での実施を公約。翌年には「すすめる会」が結成され、当初目標に掲げた人口の25%、五万人を大きく超える署名が半年間で集まりました。
日本共産党は、三十人学級を求める運動を支持し、議会内外で奮闘してきました。府議会で一貫して取り上げてきたのも共産党だけです。
自民党府議団は、代表質問で“費用対効果”を理由に「緊急性の高い課題ではない」と異議を唱えていました。
府議会で少人数学級実現を求めてきた阿部誠行共産党府議は言います。
「自民党の有力府議でさえ『反対したら地元の支持者に説明できない』と言わざるを得ないほど、少人数学級は府民の強い要望です。三十五人学級を三年生まで直ちに実施し、段階的に高学年、中学校に広げること、そして国の予算での三十人学級実施を、知事を先頭に政府に働きかけていくよう求めていきたい」
関西総局・平岡賢記者
――04年度の実施状況と特徴
北海道○小1で35人以下。一部の高校で30人
青 森○小1・2、中1で33人以下。高校の一部で35人以下(30人学級も)
秋 田○小1・2、中1で30人程度。高校の一部で35人で募集
岩 手○研究指定校として小学校10校、中学校13校。本格実施は未定
山 形○小1〜6で33人以下
宮 城○小1・2で35人以下
福 島○小1・2、中1で30人以下
栃 木○中1で35人以下
茨 城○一部の小1・2で35人以下
群 馬○一部の小1で30人以下
埼 玉○小1で35人以下。小2・中1で38人以下。一部高校で少人数学級
千 葉○小1・2で38人以下
東 京×
神奈川○一部の小1で35人以下
山 梨○小1で30人以下
長 野○小1〜3は全県で30人規模。小4〜6は一部市町村で30人規模
静 岡○一部の中1で35人以下
新 潟○小1・2で32人以下
富 山○小1で35人以下。一部の高校で30人
石 川×
福 井○小6、中2・3で39人。中1で39人以下
愛 知○小1で35人以下
岐 阜×
三 重○小1・2で30人以下
滋 賀○小1、中1で35人以下
京 都○とくに必要と認めた場合
奈 良○研究指定校の小学低学年、中1
和歌山○小1・2で一部35人程度。中1で一部35人以下
大 阪○小1で38人以下
兵 庫○小1で35人
鳥 取○小1・2で30人以下、一部中1で30人以下
岡 山○一部中1・2で35人以下。一部の高校で35人以下
島 根○小1・2で30人以下
広 島○小1・2で35人以下
山 口○中1〜3で35人以下
香 川×一部の高校職業科では35人以下
徳 島○小1・2で35人以下
愛 媛○一部小1〜3、中1〜3で35人程度
高 知○小1で30人以下、小2、中1の研究指定校でも。一部の高校で35人以下
福 岡○研究指定校28校(小1・2)、担任外教員活用の少人数学級11校
佐 賀×
長 崎○小1、中1の研究指定校で30人前後
大 分○小1で30人以下
熊 本○小1・2で35人以下
宮 崎○小1・2で30人以下
鹿児島○一部の小1・2、中1の研究指定校で35人以下
沖 縄○一部の小1・2で35人以下
(注)全教調査などをもとに作成