2004年5月17日(月)「しんぶん赤旗」
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「三菱のハブは他社製ハブと比べて最も薄かった」――。国土交通省が二〇〇二年一月に起きた三菱製大型車のタイヤ脱落・母子死傷事件の直後から、車輪と車軸をつなぐ部品ハブの構造的弱点を把握していたことが十六日までに、同省幹部の話などで分かりました。
同省はこの問題を知りながら、ハブの構造的欠陥を指摘する日本共産党の瀬古由起子衆院議員(当時)の国会質問(同年五月二十二日)に「設計・製作の過程に原因があると判断するのは困難」(洞駿自動車交通局長=当時=現審議官)と答弁、リコールの必要性を退けていました。
当時の同省幹部によると、三菱は、横浜の事故直後に他社製ハブとの比較を示す資料を同省に提出。資料は他社製ハブの構造図で、ハブのフランジ(つば)部の肉厚は、三菱が最も薄く二十ミリ、他社の最高は二十五ミリだったといいます。
三菱製ハブの破損は一九九二年以降、五十七件発生。破損個所はハブのフランジ部のつけ根などに集中し、構造上の問題が明らかになっています。
同省幹部は「当時は肉厚よりも、根もとの丸みに注目していた。三菱は『他社にも丸みが小さいハブがある』としきりに弁明していた。必要な強度計算は一応されていたし、三菱に対抗するだけの自前のデータを持ち合わせていなかったので、ハブ交換の安全対策を優先させた」といいます。
別の幹部は「三菱が一番薄かったが、新品時の強度には問題がなく、とくに劣っているとは思わなかった。他社に比べ五ミリの差は安全許容値をどれだけ見込んでいるのかの差だ」と答えました。
同省リコール対策室は「フランジ部が薄い分、他のメーカーのものより壊れやすいと思ったが『適切な整備を行えば摩耗は防げる』との説明だった…」といいます。
技術士(機械部門)の林裕さんの話 一般論として危険断面の強度は最小厚みの二乗に比例し、寿命は強度の六乗に比例します。二十ミリと二十五ミリでは、厚みが25%増えているので、1・25×1・25で強度は56%アップし、寿命は約十四倍になります。話にならないほどの違いがでます。国土交通省の技官には、理論を勉強した人はいても実物をつくった経験のある人がいないために、メーカーや専門家の言葉巧みな説明にだまされてしまうのでしょう。