日本共産党

2004年4月27日(火)「しんぶん赤旗」

年金改悪案の問題点 こんなにあるのに採決か


 自民、公明両党が連休前にも衆院厚生労働委員会で採決を狙う年金改悪法案。わずかな審議のなかでも数々の問題点が浮かびあがっています。審議打ち切りで採決とは、とんでもありません。

保険料の連続引き上げ―空洞化に拍車

 第一に、毎年の保険料引き上げが、未加入者、未納者を増大させ、年金「空洞化」に拍車をかけ、経済にも悪影響を与える問題です。

 国民年金保険料の未納率は二〇〇二年度で37・2%にものぼりました。未納の最大の理由は「保険料が高く経済的に支払うのが困難」で64・5%です。政府案では、国民年金保険料を〇五年四月から十三年連続で引き上げ、年間三千三百六十円の負担増を押しつけます。日本共産党は「いっそう未納者が増え、納付率が下がっていかざるを得ない」(山口富男議員、二十一日の衆院厚労委員会)と追及しました。政府は、これにまともに答えようとはしません。

 厚生年金保険料は九月から十四年連続で0・354%(労使折半)引き上げます。参考人質疑で、高山憲之・一橋大経済研究所教授は「企業は厳しいリストラを強行せざるをえなくなり、若者が労働力市場から締め出される。手取り所得は伸び悩み、消費支出も低迷し経済成長が阻害される」(二十二日の衆院厚労委)と指摘しました。

月5万円未満の年金も削減、生存権侵害

 政府案では、給付水準を二〇二三年度まで一律15%切り下げる「マクロ経済スライド」が導入されます。この切り下げは、給付額が低い国民年金受給者にも適用されます。平均受給額である月四万六千円の場合、15%切り下げて、二三年度の実質額は三万九千円に引き下げられます。

 山口氏は「年金収入に多くを依存する高齢者の生活に深刻な被害を与える。憲法二五条で定められた『健康で文化的な最低限度の生活を営む権利』、生存権を侵害する」(一日の衆院本会議)と批判しました。小泉純一郎首相は「年金制度は貧困を予防する制度として機能しており、法案による給付調整は憲法の規定に抵触しない」(同前)と実態とかけはなれた答弁で居直っています。

年金の支え手減らすリストラ、不安定雇用増加

 年金「空洞化」は保険料未納問題だけではありません。「財界・大企業の人減らし・リストラ、不安定雇用化が、厚生年金の基礎を崩している」(山口氏、二十一日の衆院厚労委)問題が論戦で浮かびあがりました。

 年金財政の前提となる厚生年金の加入者は、二〇〇〇年―〇二年の三年間で、厚労省の見込みをいずれも二百万人下回っています。山口氏は、九七年度から〇二年度にかけて、正規労働者は三百九十八万五千人も減少したのに、パート、アルバイト、派遣社員、契約・嘱託など不安定雇用は三百六十九万五千人増加していることを示しました。大企業のリストラを規制しないと年金の将来の安心は土台から崩れてしまう問題です。

 坂口力厚労相は「確かに正規が減っているのは事実。大きな企業で多かったことを認めざるを得ない」と答弁。しかし、具体的な問題として不安定雇用労働者の年金加入状況について問われると、まともに調査していないことが判明しました。

 山口氏は「この分野に大きな問題があるのに調査もせず、保険料を上げ、給付を下げるのは公的年金の本質を変える重大な改悪だ」と批判しました。給付と負担の数字合わせで国民に犠牲を求める改悪案が、まったく改革に値しないことが浮き彫りになっています。

消費税増税に道開く

 政府案では、基礎年金の国庫負担割合の三分の一から二分の一への引き上げについて、〇九年度まで先送りしたうえ、その「財源」として年金課税の強化や「消費税を含む抜本的税制改革」=消費税増税を計画しています。

 「二〇〇七年度に国庫負担引き上げの財源として消費税を引き上げる計画をもっているのか」という山口氏の追及に、小泉首相は「消費税も含め国民的議論を進めていくことが必要だ」(一日の衆院本会議)とのべ、消費税増税に道を開くことを容認する姿勢です。


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