日本共産党

2004年4月24日(土)「しんぶん赤旗」

サービス残業 長時間労働 是正指導を批判

愛知経営者協会 行政に要請書


 トヨタ自動車や中部電力などでつくる愛知県経営者協会が、違法なサービス(不払い)残業や長時間労働の是正指導を強化している労働行政を批判し、不払い・長時間労働を事実上野放しにするよう愛知労働局(厚生労働省の出先機関)に要請書を提出していたことがわかりました。

 違法行為への労働基準監督署の指導に、これまで曲がりなりにも従う姿勢を示してきたトヨタなどの企業が、この姿勢を根本から転換する動きとして重大です。

 要望書は三月二十六日付で、「最近の労働行政は時間管理に重きを置くばかりで、労働時間制度の多様化、弾力化の流れに逆行している」と批判しています。

 要望の内容は第一に、タイムカード等による労働時間の把握方法は、ホワイトカラーには適さないから労使に委ねるべきだとし、第二に、労働時間の法的規制が除外されている「管理・監督者」(深夜労働は残業代支払い対象)の範囲を拡大するべきだと主張しています。

 第三に、労使による時間外労働協定(三六協定)の特別条項の適用期間を「一年の半分以下」と行政が制限したことは「経営上影響が大きい」と批判。特別条項は、青天井の時間外労働を可能にしてきたものです。法の画一的な規制はせず労使に委ねるべきだといいます。

 第四に、事務・技術系労働者を労働時間の法的規制から除外する制度(ホワイトカラー・エグゼンプション)を早期導入すべきだと強調しています。

 同協会は日本経団連の地方組織の一つで、現会長は日本ガイシ会長の柴田昌治氏(日本経団連副会長・同経営労働政策委員長)が務めています。


解説 違法状態の「合法化」図る

 “労働者にはこれまで以上の長時間労働を強いるが、企業が残業代の支払いや健康破壊・過労死の責任を負うのは嫌だから、行政は手を引け。法律を変えろ”――愛知県経営者協会の要望書はこんな大企業の欲望をむき出しにしています。

 協会が批判する「労働時間管理の指導強化」が行われたのはなぜでしょうか。

 一九九〇年代後半に大企業のリストラ・人減らしが激化するなかで、違法な不払い残業がいっそう横行し、異常な長時間労働による健康破壊や過労死が広がりました。

 職場労働者や過労死遺族の粘り強い告発やたたかい、日本共産党の国会などでの追及によって、厚生労働省は二〇〇一年四月、“労働時間の把握は使用者の責任”と明確に示した通達を出し、本格的な指導に乗りだしたのです。

 通達は使用者にたいし、労働者に自己申告させる残業代の請求方法を制限し、タイムカードなど客観的な記録で労働時間を確認するよう求めました。自己申告制が不払い残業の温床となってきたためです。

 その結果、〇一年四月以降、昨年十二月までに支払われた不払い残業代は二百五十億円を超えます。それでも「氷山の一角にすぎない」(監督官)のが現状です。

 要望書は、こうした違法行為を反省するどころか、“これを取り締まるのは問題だから合法化しろ”というものです。その最たるものがホワイトカラー・エグゼンプションの導入です。いわゆるホワイトカラー労働者を労働時間の法的な規制の外において不払い残業を合法化し、過労死させても企業責任を問われにくくする狙いといえます。

 ホワイトカラー・エグゼンプションの導入は、日本経団連(会長・奥田碩トヨタ自動車会長)が政府につよく要求してきたものです。重大なことに、厚生労働省の「仕事と生活の調和に関する検討会議」ですでに議論が始まっており、六月にはとりまとめがされる予定です。審議会をへて、来年の通常国会に法案を提出する見通しといわれています。

 法の枠内でさえ、命を削る働き方を強いられているのに、法の外となったらどんな事態になるのか―。財界のたくらみを許さず、不払い・長時間残業を一掃する労働時間規制のさらなる強化こそ、求められています。畠山かほる記者


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