2004年4月23日(金)「しんぶん赤旗」
圏央道(首都圏中央連絡自動車道)インターチェンジ(IC)建設のための土地強制収用をめぐり、東京都あきる野市の住民が、国土交通相の事業認定と東京都収用委員会の収用裁決を取り消すよう求めた訴訟で、東京地裁民事三部(藤山雅行裁判長=鶴岡稔彦裁判長代読=)は二十二日、圏央道のための収用は「『土地の適正かつ合理的な利用』とはいえず違法」と、住民の訴えを全面的に認め、事業認定と収用裁決を取り消す画期的な判決を言い渡しました。
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判決は、「道路の供用開始で周辺住民に受忍限度を超える公害が生じる道路事業の認定は、違法」と指摘。圏央道の建設で「相当範囲の住民に受忍限度を超える騒音被害を与える」ことを「見過ごして事業を開始した点のみを取り上げても違法といわざるを得ない」と判断。大気汚染の「被害発生の疑念が払拭(ふっしょく)でき」ないのに、正確な調査をしないまま事業を進めていると批判しました。
「圏央道の建設で都心部や周辺の交通渋滞が緩和する」という国の主張については、「具体的裏付けに欠け、期待感の表明にとどまるもの」と指摘しました。
国の事業認定は、事業で行われる公共の利益について「具体的な根拠もないのにこれがあるものと判断したと認めざるを得ず」、法の要件を満たしていないと断罪。都収用委の収用裁決も「事業認定の違法性を承継するもの」として取り消しを命じました。
原告・弁護団は同日、「無駄な公共事業、道路公害の激化に対する国民の批判を反映し、公害反対、環境保護を求める全国の住民を励ますもの」とする声明を発表しました。
圏央道(けんおうどう) 東京都心から半径四十―六十キロに計画された一都四県を結ぶ自動車専用の環状道路。正式名称は首都圏中央連絡自動車道。総延長約三百キロのうち、埼玉県鶴ケ島市―東京都日の出町と、茨城県つくば市内の計三十キロが開通。総事業費は三兆円。小泉内閣と石原東京都知事は、圏央道、首都高速中央環状線、東京外郭環状道路の三環状道路建設を「都市再生」の重点施策にかかげています。