2004年4月21日(水)「しんぶん赤旗」
イラクの武装勢力による日本人人質事件をめぐり、日本政府と一部マスメディアが「自己責任」を追及していることについて、フランスとドイツの有力紙がこれを批判する論評、記事を掲載しています。
二十日付の仏紙ルモンドは東京特派員フィリップ・ポンス氏署名の「日本では、人質たちは自分たちの解放の費用を支払わなければならない」と題する論評を掲載しました。
論評は、解放された一人がイラクに戻って人道的活動を続けたいと語ったことに、小泉首相が「人が彼らの解放のために寝食を忘れて働いたというのに、どうしてそんなことが言えるのか」と反応した言葉や、他の閣僚による解放の費用を支払わせるべきだという発言を紹介したあと、次のようにのべています。
「人道的価値に熱意を持った若者を誇っていいし、彼らの純真さと無鉄砲さはこの国の必ずしもいつも良いとはいえないイメージ(死刑制度や難民認定の制限)を高めるものでしかないのに、日本の政治指導者たちと保守派マスコミは、解放された人質の『無責任さ』を勝手放題にこき下ろしている」
続けて記事はこう締めくくっています。
「彼ら(人質)が励ましの言葉を受けたのは、コリン・パウエル米国務長官からであった。彼は『危険を冒そうとする人がいなければ、けっして進歩はない』とテレビで語ったのである」
イラクの今日の泥沼化、ひいては武装勢力による人質作戦を招くに至った米国の政策決定に責任を負うべき人物の言葉を、小泉首相らの発言と対照させているのは、日本の政権担当者らに対する最大限の皮肉といえます。(パリ=浅田信幸)
十五日付の南ドイツ新聞は「日本人人質家族に口かせ」と題する東京発の記事を掲載しました。
記事は、「だれがどのように彼らを黙らせてしまったのだろうか? 彼らはその理由を語ろうとしないが、イラクで誘拐された日本人の家族たちは、日本政府にたいする批判にことが及ぶと、突然、口を閉ざしてしまうのだ。わずか三日前には家族たちは声高に日本の部隊のイラクからの撤退を要求していたのである」と述べています。
同記事は、家族は十四日の記者会見で急に黙り込み、「小泉政権の人質対策に満足しているか」「政府の役人から批判を抑えろといわれたのか」「なお、自衛隊の撤退を求めるのか」との質問にも、「ノーコメント」を繰り返すばかりだったと報道。さらに「確証はないのだが、家族の委縮ぶりは見逃せないほどのものだった」として、「政府の役人が人質の家族にマスコミとの対応について助言したのではなかろうかと東京の政界観測筋は疑っている」と報じました。
(ベルリン=片岡正明)