2004年4月20日(火)「しんぶん赤旗」
政府・与党が今週末にも衆院国土交通委員会で採決をねらう道路公団民営化法案の審議で、重大な問題点が次々に明らかになっています。
最大の焦点は、ムダな道路建設に歯止めがかかるかどうかです。与党議員からは九千三百四十二キロの高速道路整備計画について「民営化によってきちっと整備されるのか」(二日、自民・河本三郎議員)「着実に整備されるのか。一体いつできるのか」(七日、公明・高木陽介議員)など、全面実施を求める声が続出しました。
小泉純一郎首相は「会社が不採算でつくれないところはどのような負担でつくるかという視点も必要」と強調。石原伸晃国交相も「料金収入で管理費も出ないようなところでも、必要なものは(税金投入による)新直轄方式で着実に整備する」とのべました。
しかも政府は、九千三百四十二キロにとどまらず、法定予定路線の「一万千五百二十キロを何としても整備する」(七日、自民・江藤拓議員)べきだとの質問に対して、「一歩一歩前に進んでまいりたい」(佐藤信秋道路局長)と表明。東京湾口道路や紀淡連絡道路などムダ遣いの巨大プロジェクトについても「調査・評価をしてその先を考える」(同)と答えました。
与党議員からは「九千三百四十二キロの約束を守ることは担保されている」(二日、自民・中馬弘毅議員)と賛辞の声。自分の選挙区に関係する路線をあげ、「大変厚い予算措置をしていただいた」(七日、江藤議員)と感謝する声が上がりました。
与党議員が喜ぶのは、ムダな高速道路整備計画はわずか五路線百四十三キロについて規格等を見直すだけで、民営化会社がつくらない場合も税金を投入してつくる仕組みになっているからです。
石原国交相は、道路の必要性について「厳格に評価する」とのべました。しかし、石原国交相自身が「採算性はまったくとれないが、(物流拠点等への時間短縮などの)外部効果としてつくる」(九日)と、いろんな理屈を持ち出して全路線を建設しようとする姿勢です。
しかも政府自身が、一時間以内に高速道路を利用できる市町村の人口と面積でみると、それぞれ96%、79%をカバーしていること(九日、佐藤局長)を認め、二〇三〇年まで交通需要が伸びるという試算に「一部過大評価があった」(同)と答弁。ムダな道路建設を続ける根拠が成り立たないことが浮きぼりになりました。
十三日の委員会で、参考人として意見陳述した奈良女子大の中山徹助教授は、高速道路などの「公共事業は地方経済の自立的な再生にとって一時的な効果しかもち得ない」と指摘。「公共事業に依存しないような地域経済をどうつくるかがポイント」とのべました。
日本共産党の穀田恵二議員は「誰がつくるかの違いはあるけども、九千三百四十二キロは全部つくるということ」(九日)と指摘。「ムダな高速道路は建設を中止し、建設計画を見直すべきだ。債務を新たな国民負担なしに返済して段階的に無料化に向かうべきだ」と強調しました。
細川豊史記者