日本共産党

2004年4月19日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

住民サービス どうなった 大型開発

合併はしたけれど…


 市町村の合併が全国ですすんでいます。大型合併として注目された、さいたま市と山梨県南アルプス市で住民サービスはどうなったのか―現地からリポートします。


さいたま市の場合

国保税大幅引上げ、福祉削減

16億円仮庁舎、再開発熱心に

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南区役所の仮庁舎。2003年から5年間しか使いませんが、16億円もかけました

 さいたま市(人口百三万八千人)は旧浦和・大宮・与野の三市が合併して二〇〇一年に誕生しました。合併推進派は「合併で大きくなる財政を、福祉の充実にあてる」と大宣伝してきましたが、進んでいるのは開発事業ばかりで、福祉はあとまわしにされています。

 合併後、三市で異なっていたさまざまな制度の一元化が行われました。合併前の「サービスは高いほうへ、負担は低いほうへ」というかけ声とは逆に▽各種がん検診の負担増・対象年齢引き上げ▽敬老会助成金半減▽印鑑登録証明書など各種手数料引き上げ―など、負担増とサービス水準低下が進みました。

 二〇〇二年には国民健康保険税が大幅に引き上げられ、一番高かった旧浦和で一人当たり年間平均約七千三百円、一番安かった旧与野では一万七百円近く引き上げられました。今年からは、今まで無料で使えた旧大宮の火葬場が、旧浦和にあわせて有料化されました。

 住民運動の力で、国保税の申請減免制度や介護保険利用料の軽減制度を実現させました。ところが、市は介護保険利用料軽減制度に資産基準を導入。基準額以上の貯蓄や土地・家屋を所有している人を軽減制度の対象外とし、多くの人が軽減を受けられないようにするなど、福祉予算の削減に躍起となっています。

 福祉に冷たい一方、開発事業には熱心です。さいたま新都心や北部拠点宮原土地区画整理事業(北区)、JR浦和駅、大宮駅、武蔵浦和駅(南区)の周辺開発など複数の大型開発事業を同時進行しているほか、旧三市が計画した再開発や区画整理事業をすべて引き継ぎました。

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 さいたま市一般会計予算に土木費が占める割合は24・7%と四分の一近くにのぼり、県内第二の都市・川口の14・8%、中核市川越の11・1%と比べても際立って高くなっています。(いずれも今年度当初予算)

 市社保協の荒川常男会長(70)は「五年間しか使わず、その後取り壊す予定の南区役所仮庁舎建設には十六億円も出すのに、年間十億円でできる六十八・六十九歳の医療費助成制度はやろうとしません。合併で、福祉はむしろ切り捨てられました。合併で福祉がよくなることはないと言っていい」と、怒りをこめて話します。

 埼玉県・林 秀洋記者


山梨・南アルプス市の場合

介護保険料38%上げなど福祉後退

“ない袖はふれぬ”と市長

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南アルプス市の庁舎。合併に伴う住民負担増、サービス後退が目立ちます

 山梨県中巨摩郡西部の旧六町村(八田、白根、芦安、若草、櫛形、甲西)が合併して誕生した南アルプス市(人口七万一千人)は、四月で一周年を迎えました。合併に伴い、介護保険料(基準額)が旧町村から最大で38%も引き上げられるなど、住民負担増やサービス後退が目立つ一年でした。

 介護保険料の大幅引き上げなどを受けて、同市などで活動している「いのちと健康を守る峡西峡南地域連絡会」(会長=上所洋・巨摩共立病院院長)は今年二月、介護保険料の引き下げや保険料・利用料の減免を求める千百七十一人分(累計で千八百九十人分)の署名を提出しました。

 しかし、石川市長は「無いそでは振れない。高齢者が増えれば負担も上がる」と、保険料再引き上げまで示唆しました。

 住民負担増やサービスの後退は介護保険料だけではありません。

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 旧・八田、芦安村では七十歳、その他の四町村では七十五歳から毎年支給されていた高齢者祝い金は合併後、八十歳からに縮小され、支給総額も軒並み減らされました。四月からは支給額がさらに削られ、二年連続で改悪されました。

 旧・甲西町では県内で唯一、重度障害者、乳幼児、ひとり親家庭の医療費が、すべての被保険者、被扶養者について窓口無料化されていました。ところが、合併後、国民健康保険の乳幼児のみ窓口無料に後退しました。

 福祉タクシー券の支給枚数や人間ドックの対象年齢でも、合併前からの後退が見られます。旧八田村の温泉「樹園」は、無料だった障害者の入浴が有料化されました。

 一部で実施されていなかった放課後児童クラブ(学童保育)は今年四月から全市に広げられたのは前進ですが、月二千円(おやつ代別途)の保護者負担が新たに導入されました。

 合併前、県や旧六町村の首長らは「サービスは高く、負担は低くが原則」と繰り返し宣伝していました。

 石川豊市長は旧・櫛形町の町長です。三月定例市議会の所信表明で、自らが合併に向けて「非常においしい話を進めてきたものの一人」であると認めています。

 三月まで「いのちと健康を守る峡西峡南地域連絡会」事務局長だった村山美紀さん(30)=同市在住、医療ソーシャルワーカー=は「合併したからといって暮らしが良くなるというものではないというのが実感です」と話しています。

 日本共産党市議団(穴水俊一、名取純一、横内広志、鈴木徳平、亀ケ川正広の五氏)は、介護保険料・利用料の減免や、合併で後退したサービスの回復などを一貫して要求し、乳幼児医療費助成制度の一部負担金廃止や、小中学校教室への扇風機設置などの成果をあげてきました。

 穴水市議団長は「市の総合計画の素案が旧町村ごとの地域審議会で始まり、新市のまちづくりが本格化します。市民の暮らし第一の市政の実現と、偏りのない地域発展のために全力をあげます」と話しています。

 山梨県・清水英知記者


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