2004年4月17日(土)「しんぶん赤旗」
「あまりにも不自然なことばかりだった。捜査が入るのが遅すぎたぐらいだ」(ハンナン元社員)―。輸入牛肉偽装事件で摘発された大手食肉販売会社「ハンナン」グループの国産牛肉買い取り事業をめぐる動きは、日本共産党と本紙が再三指摘してきたように疑惑にまみれた不自然極まりないものでした。同グループを率いた浅田満容疑者は、大阪府同和食肉事業協同組合連合会(府同食)の会長を務め、「同和」を利権として最大限に利用してきた人物です。
府同食と大阪府食肉事業協同組合連合会(府肉連)の二団体が買い取り申請した牛肉は千七百十八トン。うち、同グループ関連は、判明分だけでも約六百トンと突出していました。
保管した膨大な肉箱の中からごく一部だけを抜き取る検査方法のもとで、雪印、日本ハムなどの偽装肉事件が次々と発生しました。しかし、二団体の申請牛肉は、すべての箱を検査する「全箱検査」が開始される前に、簡単な検査が済んでいることを口実にして、焼却処分に。その事実は、二〇〇二年七月、富樫練三参院議員の国会質問などで武部農水相(当時)に認めさせました。
また、同グループのハンナン食肉が、BSE(牛海綿状脳症)検査済み証明書を悪用して、産地不明の箱に高級牛肉の証明書をはりつけるという手口で、産地偽装をおこなっていたことも元社員が内部告発。これも同年十二月、大沢たつみ参院議員が国会で追及しました。
こうした、やり放題を許したのは、政府・農水省の甘い対応。検査は、ずさんなだけでなく、倉庫のどの牛肉を検査するかが検査を受ける側に事前通知されていました。
浅田容疑者は、買い取り事業をすすめた鈴木宗男被告(元自民党衆院議員)に高級車を格安で提供(本紙同年三月十七日付でスクープ)するなど、親密な関係です。
浅田容疑者は、農水省が買い取り肉の全箱検査実施を発表した直後の同年四月九日、武部農水相に検査緩和を求めて他の食肉業界団体とともに直接交渉をおこなったことも明らかになっています。
今後、行政や政治家が浅田容疑者とどうかかわっていたのか、全容解明が求められています。
国産牛肉買い取り制度 国内でのBSE(牛海綿状脳症)発生を受け、感染牛が市場に出回るのを防ぐため、農水省の外郭団体「農畜産業振興事業団」が、全国食肉事業協同組合連合会など業界六団体を通じて国産牛肉を買い取った制度。対象となったのは、食肉牛のBSE全頭検査(二〇〇一年十月以降)の前に解体された国産牛肉。この事業で国は、計約一万二千六百トン、約二百九十億円の牛肉を買い取りました。しかし、申請牛肉をチェックする体制が極めて不十分だったため、不正が続発しました。