日本共産党

2004年4月17日(土)「しんぶん赤旗」

イタリア人の人質殺害

蛮行に国民の怒り


右派政権の対米追随を批判

 イラクのバグダッド西方のファルージャ付近で武装勢力に拘束されたイタリア人人質の一人が殺害されたニュースは、イタリア国内に衝撃を与えています。国民やマスメディアからは、武装集団の蛮行を糾弾すると同時に、今回の事件はベルルスコーニ右派政権の対米追随外交がもたらした悲劇だと怒る声も多く出ています。

殺害の脅迫

 「政府が米国の戦争を支持したことがイタリアを危険な状況に追いやった。国民はこの政府から解放されるときに初めてテロからも解放される」「この無責任で無能な政府では汚れた戦争を前に何の望みも持てない」

 これらは人質殺害のニュースを受けて、全国紙コリエーレ・デラ・セラがホームページ上に設けた討論欄に寄せられた声です。殺害への憤りと同時に、「外交政策を持たない政府を見てがっかりした」など、政府の外交姿勢を批判する意見も目立ちました。

 イタリア人四人がイラクからの同国軍撤兵を要求する武装グループに拘束されたことが確認されたのは十三日。ベルルスコーニ首相はその直後に、撤兵要求を一蹴(いっしゅう)する声明を発表しました。これに対し犯行グループは一人を殺害し、要求が受け入れられない場合、「一人ずつ殺害する」と脅迫しています。

 政府は十五日の声明で「彼らは人命を奪ったが、われわれの平和への任務と価値は揺るがしていない」などと述べ、撤兵を拒否する強硬姿勢を変えていません。

 イタリアは現在イラク南部のナシリヤを中心に三千人の兵を駐留させています。

 人質をとって要求を突きつける武装集団のやり方を許せないという点では、国内は一致しています。一方で、今回の事件が起きた根本的原因には、イラク戦争を支持し派兵も強行するなど、欧州諸国の中で突出した対米追随を続けてきた政府の外交姿勢があるという指摘が相次いでいます。

米国の下僕

 レプブリカ紙十五日付は「政策のない国の悲劇」と題する論評を掲載しました。論評は、政府は派兵を「イラク国民の支援のため」と説明してきたが、戦闘が激化する中で「その論理はもはや成り立たない」と強調。右派政権は米国のイラク戦争を支持することで、国連の排除や欧州の分断に貢献してきたと述べ、首相は「イタリアを米国の孤独な手下」に変えたと批判しています。その上で「政府は自らを縛る(米国の)下僕のイデオロギーを断ち切って、外交を握る必要性を感じなければならない」と論じました。

 同日付のスタンパ紙も「戦闘が行われているときに、(イタリア軍は)どんな調停活動をできるというのか」「四人の人質や他のイタリア人の生命と(国の)印象の善しあしのどちらが大切なのか」と政府を問いただしています。

 (島田峰隆・党国際局員)


伊のイラク政策転換求める声

“軍撤退を”“国連に委ねよ”

 【パリ=浅田信幸】イラクで武装勢力に拘束されていた人質が殺されたことで、政権にイラク政策の根本的転換を求める声が強まっています。

 有力野党である左翼民主(党)のファシノ書記長は十五日、「転換を急ぎ、これまでとは根本的に異なる方針を持ち、新たな局面に移行する必要がある」とし、「主権をイラク人の手に戻すプロセスの管理を国連に委ねる根本的な転換」を政府に要求しました。

哀悼の表明

 また共産主義再建党のベルティノッティ書記長は、犠牲者とその家族への哀悼と連帯を表明しつつ、「占領を終わらせたいという要求はイラク全体のものになっている」と強調。「脅迫に対して、戦争を続けると宣言するのはまったく展望を欠いたもの」「軍を撤退させ、あらゆる点で戦争の連鎖的激化を取り除くことに貢献することが必要だ」として、「自主的な立場」から占領の終結とイタリア派遣軍の撤退を求めました。

 野党中道左派連合「オリーブの木」は即時撤退を掲げてはいませんが、代表のルテリ氏は、「(ベルルスコーニ)首相はブッシュ米大統領に会うたびに全面的同意を与えてきた」「米国との関係で先の見通しを持っていない」と批判しています。

支持率低下

 共産主義再建党や緑の党、一部の左翼民主(党)はイラク派遣軍の即時撤退を要求。これらの党は野党各党に対し即時撤退を求める動議への賛同を求めています。

 イタリアでは昨年のイラク戦争開戦前もその後も、戦争と占領に反対する世論が強く、数十万人、数百万人規模のデモが繰り返し行われてきました。ベルルスコーニ政権は、イラク政策での対米追随だけでなく、最近では「金持ち優遇税制」や年金改悪の提案で支持率も低下しています。


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