日本共産党

2004年4月17日(土)「しんぶん赤旗」

農業委員会「解体」への一歩

法「改正」案の問題点


 今国会に農業委員会のあり方にかかわる法「改正」案が提出されています。農地や地域農業を守る役割を後退させ、その解体につながる内容です。


都市農業の衰退へ

 「改正」の第一は、農業委員会を置かなくてもよい市町村を拡大することです。現在、都府県では九十ヘクタール以上、北海道では三百六十ヘクタール以上農地のある市町村に農業委員会の設置が義務づけられています(必置規制)。

 「改正」案は、その基準面積の対象から市街化区域(生産緑地を除く)を除外しています。これにより、全国で新たに二十三市町村が九十ヘクタールを割ることになります。

 加えて政府は基準面積そのものも政令「改正」で大幅に引き上げる予定です。倍の百八十ヘクタールになれば、東京では基準を上回るのは二十三区で練馬区、多摩地域で五市だけになり、大阪府では四十四市町村中十九が下回ります。

 現在、基準以下でも市町村の判断で九割前後に農業委員会が置かれていますが、「改正」案のベースとなった農水省の報告書では、小規模農地面積の市町村に「廃止を含めた見直し」を求めており、今回の「改正」を契機に都市部で農業委員会廃止の流れが広がりかねません。都市農業の衰退に拍車をかけるのは必至です。

農政の推進機関に

 第二は、農業委員会の活動を政府の農政推進に重点化させることです。

 「改正」案は農業委員会の業務から「農業振興計画の樹立」「農民生活の改善」などを削除する一方、「農地等の利用集積」「法人化」の推進などを新たに加えています。「農業全般にわたる問題を総合的に解決していくための農業者の民主的な機関」(農水省報告書)として発足した農業委員会を、政府がすすめる農業の大規模化などを推進する機関に変質させるものです。

 このほか、選挙で選ばれる委員の定数引き下げなど農家の代表としての性格を弱める案も盛り込まれています。

小泉「改革」の一環

 一昨年来、小泉首相の諮問機関である経済財政諮問会議などから農業委員会制度の見直しを迫る“提言”があいつぎました。必置規制の廃止や国の農業委員会交付金の一般財源化、組織や活動の重点化・スリム化などです。今回の「改正」はその一部で、交付金の一般財源化は「二〇〇六年度までに結論を得る」(骨太方針第三弾)とされています。そうなれば、農業委員会の財源の保障がなくなり、活動に重大な支障をきたします。

 さらに株式会社の農地取得の全面解禁など、耕やす者の権利を保障する戦後の農地制度の解体に結びつく要求が、財界を中心に小泉「改革」に乗じて執拗(しつよう)に持ち出されています。それは、投機目的を含む資本による農地支配に道を開き、農地の権利移動などの是非を耕作農民の自治で判断する農業委員会制度の基本的なあり方を否定するものです。

農家代表の役割を

 委員の多数が農民から選ばれ、その声を農政に反映できる農業委員会の制度を維持することは、地域の農業振興や農地を保全するうえで欠かせません。農業委員会解体を許さぬ地域からの取り組みが始まっています。

 日本共産党東京都委員会は今村順一郎参議院選挙区候補をはじめ党議員、農業委員などが四月五日、「農業委員会制度の存続を求める要望書」をもって政府に要請しました。西東京市の三月市議会で、現行制度の維持を政府に求める意見書を採択、今回の「改正」で基準以下になる三鷹市では日本共産党議員の質問に市長が「農業委員会を引き続き設置していく」と答弁しています。

 (国民運動委員会橋本正一)


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