2004年4月9日(金)「しんぶん赤旗」
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愛知県東海市の新日鉄名古屋製鉄所で昨年七月、羽田優(すぐる)さん=当時(18)=が労災死する事故が起き、母親の羽田光子さん(41)ら遺族が、同社と雇用主の上組(かみぐみ)にたいし、損害賠償や安全対策の充実を求めていましたが、遺族側の訴えを大幅に認める和解(示談)が成立。八日、光子さんらが記者会見で発表しました。
和解の主な内容は▽両社が深く陳謝をする▽上組は損害賠償金を支払う▽両社は労災を発生させないため万全の措置をとることに努める、など。遺族側代理人の竹内平弁護士は、親会社の新日鉄が下請けの上組に責任を押し付けず、両社が陳謝し、上組が損害賠償も支払うなど、ほぼ全面的に会社側が責任を認めたものと指摘しました。
事故は昨年七月十八日に発生。優さんは同製鉄所厚板工場で大型機械を操作し、圧延前の鉄の塊(スラブ)の切削作業をしていました。
事故が起きたのは午後三時三十五分ごろ(推定)とみられますが、優さんが機械に頚(けい)部を挟まれているのが発見されたのはそれから四十五分後でした。
優さんは昨年三月に高校を卒業し、同製鉄所で構内下請けをしている上組に就職。父親がその前の年に病死、六人兄弟の長男として働いていました。
光子さんら遺族は、非常時・不正常作動時の安全装置がなく、安全教育が欠如していたなどとして、昨年九月、両社に損害賠償などを求める申し入れをし、協議を重ねていました。
光子さんは和解が決まって優さんの墓前に「優。裁判覚悟で申し立てをしたけれど、私の思い、優の思いが、少しでも通じたよ」と報告したといいます。