日本共産党

2004年4月3日(土)「しんぶん赤旗」

刑事訴訟法「改定」案 衆院で審議開始

公正な裁判へ抜本修正必要


 国民が裁判に参加する「裁判員制度」法案とともに容疑者を刑事裁判にかけるための手続きを決める刑事訴訟法「改定」案の国会審議が衆院で開始されました。この法案は本来、裁判員制度導入に伴って必要な刑事裁判の手続き改定を行うという性格のもの。国民の司法参加によって実のある裁判員制度にする目的に合わせた刑事訴訟法の抜本的な改正が必要です。

 米田 憲司記者




密室取調べの解消と
起訴前保釈制度創設を

 日本の刑事裁判は、起訴されれば99%以上有罪になるという世界でも異常な実態があり、死刑再審や誤判が生まれています。しかも捜査段階で「自白」した被告人から無実を訴える声が絶えず起きています。こうした実態が陪審員制度復活を求める声にもなっていました。

 刑事裁判の誤判を生む構造をなくすために、日本弁護士連合会(日弁連)や自由法曹団は、(1)最長二十三日間にわたる代用監獄制度下での密室取り調べの解消と取り調べにビデオ録画やテープ録音といった可視化を導入する(2)保釈をしないで裁判にかける「人質司法」を解消するために、起訴前保釈制度の創設―を求めてきました。

 ところが、今回の刑訴法「改定」案ではこれらの点にまったく手を加えようとしていません。誤判を防止し、公正・適正な裁判を行う司法制度として根本的な欠陥を持ったままとなっています。


弁護人や裁判員への
証拠全面開示は当然

 また、同法案では検察官手持ち証拠の全面開示を認めず、開示の要件を限定し、裁判が始まる前の準備手続きで職業裁判官が開示すべき証拠の範囲を判断するという設計になっています。

 その判断のために、裁判官は検察官から証拠の標目の一覧表や個々の証拠の現物を出させて検分できます。しかし、弁護人や裁判員には見せない仕組みです。

 弁護人と検察官とは、対等の立場で法廷に臨むべきものですから、証拠を全面的に開示する必要があるのは当然のことです。裁判員制度の趣旨は、職業裁判官だけでは偏った判断になるのを防ぐことです。職業裁判官が弁護人も見ることのできない証拠をあらかじめ検討して「予断をもって」裁判に臨むのでは制度の目的に反し、誤判を生む可能性を高めることになりかねません。

 同法案では、開示された証拠すべてについて、「当該事件の裁判のための審理」に関係する手続き以外で使用してはならない、という「証拠の目的外使用の禁止」条文が設けられています。

 こうした禁止規定があると、例えば当該事件の弁護士以外の者が参加した弁護団会議での記録コピー配布、著作・雑誌・会報などによる事件報告での引用、事例研究会での配布、宣伝物での引用などが広く規制される可能性もあります。

 かつて、松川冤罪(えんざい)事件や死刑再審事件から、各種冤罪事件に至るまで、多くの国民が公開された訴訟記録などを検討し、真実を訴え、公正な裁判を求めることで正しい裁判が実現されてきた歴史があります。

 被告人の権利救済のためにあらゆる活動をしなければならないときに、被告人および弁護人を罰則で縛ることは、被告人の防御権、弁護人の弁護活動に重大な影響を与え、公正な裁判にはなりません。

 自由法曹団(坂本修団長)は三月二十四日、「重大な決意をもって裁判員法案・刑事訴訟法『改正』法案の抜本修正を求める」声明を発表しました。


もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp