2004年3月29日(月)「しんぶん赤旗」
前回参院選挙で公職選挙法違反(地位利用)として幹部が有罪判決を受けた旧郵政省、郵政事業庁(現日本郵政公社)のぐるみ選挙が今夏の参院選を前に再び動きだしています。自民党から参院選に比例代表で出馬する元郵政官僚の後援会員名簿用紙を送りつけられた中部地方の元普通郵便局長が、官僚組織あげてのぐるみ選挙の体験を本紙に語りました。
|
私のいた郵政では、官の組織をあげての政治活動、選挙活動がずっと行われていました。
郵政の選挙は、以前からおもに三つの流れでやっています。郵政OBの「大樹会」、特定局長の全国特定郵便局長会、もう一つが郵政省、郵政事業庁の官の組織です。郵政公社となったいまも公社職員、特定郵便局長は国家公務員です。
郵政の政治・選挙活動は、郵便、郵貯、簡保に次ぐ「第四事業」と呼ばれ、官の組織では総務部が主管していました。「省益を守れ」が合言葉でした。
官の組織を通じてやったことは、自民党から出る郵政候補の後援会員名簿集めと自民党へのカンパです。どちらも、郵政局総務部長から、都道府県にあるブロックの幹事局を通じて、普通郵便局の局長に指示がきました。
私の体験によると、後援会員集めは、参院選の前の普通郵便局長会議の時に指示されました。
私が普通局長のときは、局長会議の昼休みや休憩時間に、とりまとめをする幹事局の局長から「これ例の」「第四事業の」と封筒を手渡されました。なかには、氏名や住所、電話番号を書き込む後援会員名簿用紙が十枚前後入っていました。
みんな自分と家族の名前、ときには友人、知人の名前を書き、局長、幹事局長、総務部とさかのぼって提出するのです。
カンパは、選挙にかかわらず年二回のボーナス時に集められました。普通局の課長になると一回五千円を出します。普通局長のときは一回一万円でした。
これらのことは職務上のラインを通じてすべて公務中にやっていました。第四事業というぐらいですから、これは職務だ、管理職になればやるものだ、と思ってやっていました。拒否すれば、(昇進)ラインからはずれるとも思っていました。
二〇〇一年の参院選で、近畿郵政局長ら大量の郵政関係者が公選法違反(地位利用)で逮捕されました。しかし、今度の参院選でも、元郵政審議官の長谷川憲正氏が職域候補として立候補を予定しています。
麻生太郎総務相は昨年十二月に「総務省あげて北里(敏明・参院選比例予定候補=元消防庁次長)を上げるべく全力をあげて頑張りたい」と発言して問題になりました。ことしになって郵政OBの私にも長谷川氏の後援会入会申込書が送られてきました。形を変えても、また郵政のぐるみ選挙が行われるのではないか、注視する必要があります。
休日に自宅周辺で「しんぶん赤旗」号外を配った社会保険庁職員が逮捕・起訴されました。これは公務とは何の関係もない行動を弾圧するもので、まったくおかしなことです。官僚の地位利用による官の組織ぐるみ選挙活動こそ徹底して追及するべきです。