2004年3月26日(金)「しんぶん赤旗」
沖縄の普天間基地に代わる新基地建設について米国側が二〇〇四年度中に「設計概要書」を提示するという動きは、日米間で進む在日米軍の再編協議にもかかわらず、建設に向けた作業自体は着々と進めようとする両政府の姿勢を示すものです。
新基地建設が決められたのは、一九九六年十二月のSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)最終報告でした。老朽化した普天間基地に代えて最新鋭の基地をつくり、米海兵隊の新たな出撃拠点にしようというのが狙いでした。
日本政府は、新基地の建設予定地とした名護市の市民投票(九七年十二月)で反対が過半数を占めたにもかかわらず、県と市に受け入れを認めさせ、九九年十二月に具体的な建設場所を同市辺野古沖と正式に決定。二〇〇二年七月には、長さ約二千五百メートル、幅約七百三十メートルという巨大基地を埋め立て工法で建設することを決めました。
防衛施設庁は現在、建設に向けた環境影響評価(アセスメント)の準備を進める一方、事実上の本体工事といえる新基地の護岸工事のためのボーリング調査を計画。そのために必要な協議を沖縄県と進めています。
昨年末には、建設予定地近くの大浦湾に新基地建設の作業場をつくるため、新たな埋め立てを計画していることも明らかになっています。
これに対し地元住民らは、天然記念物ジュゴンやサンゴ礁への深刻な被害がいっそう広がると強く反発。ボーリング調査では、県が聞き取りをした専門家からも環境への影響に懸念が示され、実施に向けた協議は難航しています。
一方、沖縄県民らの粘り強い新基地反対運動によって、七年以内の完成という当初の建設計画が大幅に遅れるなか、米政府が計画見直しを打診していることも明らかになっています。
その中では、名護市辺野古沖での建設を白紙に戻し、普天間基地を(1)沖縄本島ではなく下地島にある民間空港に移転する(2)本島中部の米空軍嘉手納基地に統合する―などの案が浮上しています。
政府はいま、米国が進める世界規模での米軍再編(トランスフォーメーション)の一環として在日米軍の配置見直しに関する協議を行っていることを認め、その対象にはSACO最終報告も含まれるとの認識を示しています。一方で、普天間基地に代わる新基地建設を含め同報告を着実に実施していくとの立場も繰り返し強調しています。
辺野古沖への新基地建設にせよ、在日米軍の再編協議で米側が提示している新たな案にせよ、沖縄県民に新たな基地の負担を押しつけるものです。問題の根本的解決は、普天間基地の無条件返還を実現することです。榎本好孝記者