2004年3月23日(火)「しんぶん赤旗」
二十二日に全面和解した人権回復を求める石播争議は、会社が日本共産党員やその支持者とみなした労働者を“企業批判者”などと敵視し、「ZC(ゼロ・コミュニスト=共産党員ぼく滅)計画管理名簿」を極秘に作成し、約四十年もの長期にわたって続けてきた反共労務政策が完全に破たんしたことを意味します。
「ZC計画管理名簿」に載った労働者にたいしては、日本共産党員を指す隠語として「○共」を使用し(このことが法廷で露見した一九九〇年以後は「○」を使用)、「○共に何事においても差をつけてやるんだと、いつも腹にもつ」「○共が持っている技術は早く自分のものにしてとりあげる」と管理職、職長、班長らに指示して徹底的に差別してきました。
後に「(アカを落とす)へちまの会」と名前を変えた、秘密労務組織(インフォーマル組織)をつうじて、「日共は会社を辞めろ」と反共宣伝を強め、○共とは「口をきくな」「あいさつするな」「目を見るな」「ビラを受け取るな」「香典を受け取るな」「行事に呼ぶな」と“職場八分”状態においてきました。
会社は、尾行などの違法な手段を駆使しなければ到底知り得ない「地域でのサークル活動への参加」まで、警察公安と情報交換をしながらこの名簿を作成。しかも毎年見直していることが明らかになっています。
石播は、反共差別をテコに労働者支配を強化。職場は会社のどんな横暴にも反対できない状況にされ、一九七九年には四千六百人、一九八六年には四十五日間で七千人の大規模な人減らしが強行されました。労働者数は一九七五年の三万五千人から、現在約一万二千人に激減しています。サービス残業(ただ働き)、四十歳以上の高卒女性社員の賃金は高卒男性の六割程度という女性差別がまかりとおってきました。
こうした「大企業に憲法はない」という状況を許さないと人権じゅうりんの差別の撤廃をもとめて、二〇〇〇年三月、田無・瑞穂工場の労働者が東京地裁に提訴したものです。
提訴後、「ZC計画管理名簿」と関連文書が明るみに出、裁判所に証拠として提出。日本共産党の小沢和秋衆院議員(当時)が〇二年十一月、井上美代参院議員が〇三年四月に国会で追及。坂口力厚労相も「事実関係を調査する」と答弁しました。
今回の和解は、会社に「ZC名簿」の存在を認めさせ、事実上謝罪させ、原告の賃金差別を是正したことに加え、再発防止策を具体的に確約させたのは画期的です。
会社と原告の間で確認した覚書別紙では、実際に石播でおこなわれていた差別と排除の事例を十四項目列記して「こうしたことをやってはならない」と明示(別項)。会社がこうした内容を含むパンフレットを全従業員に配布して徹底することを約束しています。
今回の勝利和解は、大企業職場のなかでも、憲法と労働基準法に依拠してたたかえば、人権じゅうりんの反共労務政策をやめさせ、撤回させることができることを明確に示しました。大企業の横暴とリストラに苦しむ人々に希望と勇気を与え、職場での労働者の団結と連帯を広げていくたたかいの出発点ともなるものです。(原田浩一朗記者)
(1)女性であることを理由に、補助的な業務を続けさせ、資格や賃金を低く抑える。
(2)思想、支持政党、労働組合活動、およびインフォーマル組織の活動への協力度を理由に、仕事(業務従事資格の付与を含む)、資格、賃金などで格差をつける。
(3)合理的な理由がなく、本人の意思に反して、仕事を取り上げる、極端に少なくする、席や執務場所を隔離する。
(4)仕事上のミスや行き違いを口実に、みなの前で大声で非難・罵倒(ばとう)する、始末書や反省文を要求する、つるしあげる、社内規定にない私的制裁を加えるなどで、精神的または肉体的に苦痛を与える。
(5)合理的な理由がなく、仕事や安全衛生などの教育・研修、または社内公開講座などを受けさせない。またこれらの開催や募集を知らせない。
(6)合理的な理由がなく、会社の福利厚生制度の利用を制限または拒否する。
(7)会社行事、職場行事および日常の職場の交友において、特定の従業員を無視、嫌がらせ、排除を行う。またはこれを働きかける。
(8)合理的な理由がなく、会社体育文化会所属サークルへの入会を拒否する、退会を求める。
(9)「話をすると同じに見られるから損だよ」などの忠告・助言という形であっても、結果的に特定の従業員とのあいさつ・対話・交友を、監視・制限・妨害する。
(10)香典、祝い金、餞別(せんべつ)などを集めない、知らせないなどで、特定の従業員を職場内の冠婚葬祭から排除する。
(11)就業時間中にインフォーマル組織の活動や会議を行う。またはこのために施設使用や外出などの便宜をはかる。
(12)特定の従業員が配布するビラなどを受け取らないように働きかける。
(13)新入社員教育などで、労働組合活動に関し特定の従業員や団体を非難し、またはビラなどの受け取り拒否などの非協力を教唆する。
(14)思想、支持政党、労働組合活動の傾向、インフォーマル組織の活動への協力度、居住地での活動、家族の活動、および私病歴などを調査する。またこれらをリスク・マネジメント(危険の管理・制御)の対象にする。またこれらを目的にした教育を行う。