日本共産党

2004年3月23日(火)「しんぶん赤旗」

ハマス創設者

ヤシン師 殺害

イスラエルをEUなど非難


 【カイロ=岡崎衆史】パレスチナ自治区ガザからの報道によると、イスラエル軍武装ヘリが二十二日未明、ガザ市内でミサイルを発射し、パレスチナ原理主義組織ハマスの精神的指導者ヤシン師ら四人を殺害しました。十五人以上が負傷しました。ただちにパレスチナ全体で住民が抗議。アラブ諸国をはじめ世界各国で非難の声があがっています。ハマスはイスラエルとの全面戦争を宣言しました。

地図

 イスラエル放送は、シャロン首相自身がこの攻撃を指揮したと報じました。

 イスラエル軍ヘリがミサイルを発射したのは、車いすのヤシン師がガザ市内のモスクを後にした直後。最初のミサイル攻撃で、ヤシン師は車いすから地面に投げ出され、周囲が駆けよったところにさらに二発のミサイルが発射されたといいます。

 カタールのアルジャジーラ・テレビによると、ヤシン師の葬儀が行われたガザ市では、約十五万人がイスラエルに対する報復を叫びました。ハマスは、ガザ市内の路上に設置されたスピーカーを通じて、「イスラエルのあらゆる家庭、町、路上で死をもたらす」と報復を宣言しました。

 パレスチナ自治政府のアラファト議長は、「野蛮な行為」と非難し、今後三日間を服喪の日と定めました。

 エジプトのムバラク大統領が「野蛮な行為」と抗議し、欧州連合は外相理事会で非難声明を採択しました。


中東情勢、危機的に

解説

 イスラエル軍が二十二日、パレスチナ過激派のイスラム原理主義組織ハマスの指導者を暗殺したことは、報復の連鎖を招き、すでに多数の死傷者が相次ぐパレスチナ問題をいっそう悪化させるものです。

 ヤシン師は、ハマスの創設者で、その精神的な指導者でした。ハマスは、十四日にイスラエルのアシュドッド港で十人が死亡した連続爆破テロでも犯行に加わりました。

 ハマスが行ってきた罪のない人々を殺害するテロが許されないのは当然です。テロは、イスラエルによるパレスチナ人弾圧の口実とされ、和平を求めるイスラエル、パレスチナ双方の障害ともなってきました。

 しかし、直接その指導者を暗殺するという暴挙は許されない国家テロです。パレスチナ・イスラエル間の関係をさらに重大な危機的状況に陥れるだけでなく、中東全体を緊張させることになるでしょう。(カイロ=岡崎衆史)


 ハマス パレスチナのイスラム原理主義過激派組織。ハマスはアラビア語の「イスラム抵抗運動」の頭文字を取ったもので、「熱狂」の意味もあります。一九八七年十二月のイスラエルの軍事占領に反対するパレスチナ人の民衆蜂起(インティファーダ)を契機に、イスラム復古勢力のムスリム同胞団を母体に創設。

 創設の中心になったのがガザ地区の過激導師として知られたアハメド・ヤシン師で、同師は「ユダヤ人に対する聖戦」を宣言。パレスチナ住民の救援や貧困者救済なども行い、住民の支持を獲得。イスラエル国家否認の立場で、軍事部門「カッサム旅団」を中核に自爆テロなどの武力行動を展開してきました。


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